抜群の安定性が魅力のはずの公務員に、非正規職員が急増している。「官製ワーキングプア」とも言える彼らの現実とは。
忘れもしない。4年前の3月29日のことだ。大阪府内のハローワークで非常勤の相談員を務めていた時任玲子さん(53)は、突然仕事を失った。
説明はなかった。3日後にスタートする新年度も働き続けるための面接を受けた直後、「不採用です」とだけきっぱり告げられた。9年間、職場に尽くしてきたにもかかわらずだ。時任さんは「落とすための面接だ」と思った。
このころ一人息子は、高校進学を控えていた。相談員の仕事で得る収入は、シングルマザーの時任さんにとって生命線。
「がたがたと足元が崩れていきました」と当時を振り返る。
仕事が好きで、前の年には上司のすすめもあってキャリアコンサルタントの資格も取得した。息子は塾に通いたがっていたが、「まずはお母さんの給料を上げるのが先だから我慢してね」と説得し、生活を切りつめて約30万円の資格取得費を捻出した。苦労したかいあって、新年度からは手取り月給が初めて20万円を超え、生活はいくらか楽になるはずだった。