しかし、後ろ倒しによって選考期間が短くなり、十分な採用活動ができないことを懸念した企業は学生とのさらなる早期接触を狙い、大学3年生向けサマーインターンシップが急増した。リクルーターを使ったり、面接を「ジョブマッチング」などと言い換えたりする企業のフライングも横行した。学生はまともに授業に出られず、4年生の夏に正念場を迎える理系学生の研究にも影響は大きかった。

「周囲の動きが見えなくて、例年競合にならない業界とバッティングしたり、例年より多くの内定者を引き抜かれたりしてしまった」(大手メーカー人事)

「大手の内定がなかなか出ないので、内定者のフォロー期間が異様に長かった。8月以降、大手に引き抜かれても、追加募集の期間がなかった」(ITベンチャー人事)

 など、企業も困惑している。

●一つの基準では各社を縛れない

 前文科相の下村氏が指摘したように、6月まで米国の大学に留学していた慶応大学法学部4年の女子学生(22)からは、

「留学から帰っても就活が間に合うんだと思ってうれしかった」

 と好評だが、多くの当事者にはマイナスのほうが大きかった。

 今年の就活・採用がほぼ終息した直後の10月15日、日商はオワハラの横行などを問題視して就職活動の「繰り上げ」を提言した。経団連も、9月下旬から会員企業に就活についてのアンケートを実施。榊原定征会長が10月に記者会見して、

「実際やってみて予見できなかった問題も出てきた」

「学生への負担が大きかったと思う。(中略)学生、大学、企業のいずれにとっても今回の新スケジュールは問題が多かった」

 と総括。17年入社の就活では選考開始を8月から6月前後に早める方向で検討を始めている。

次のページ