宇宙という最大のロマンに魅せられたリケジョがいる。夢の仕事に就いた女性を取材した。
宇宙にも天気があることをご存じだろうか。太陽の表面で起こる爆発によって生み出されたプラズマを含む風は、しばしば宇宙空間で嵐を引き起こす。
地球の周りには、2重の帯状に高いエネルギーをもった電子が集まる、ヴァン・アレン帯(放射線帯)がある。宇宙で嵐が起こると、このヴァン・アレン帯が生成されたり、消失したり、変動したりする。これが衛星に障害を起こし観測の邪魔をしたり、宇宙飛行士の被曝を誘発したりする。
このヴァン・アレン帯生成や消失のメカニズムを解明するため、来年度に打ち上げが計画されているのがジオスペース探査衛星(ERG)。このERGのシステム担当をしているのが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小川恵美子(31)だ。ひと口にシステム担当といっても、衛星全体のシステムを設計したり、設計したシステムが正しく動くか確認する試験をしたりするなど、職務は多岐にわたる。
「メーカーで設計や製造をする人や、JAXAでシステムをつくる人など、衛星打ち上げには多くの人がかかわっています。それらの仕事を俯瞰して、ひとつにまとめあげる。私は、いわば衛星の何でも屋です」
そう本人が表現するように、年間を通して同じ仕事をすることはない。ERGは観測機器を載せるミッション部と、主に電源や姿勢制御のシステムなどを載せるバス部に分かれるが、昨年10月から今年4月までは、ひたすらミッション部の試験計画に打ち込んだ。当初は、観測機器がなかなかうまく動いてくれず、試行錯誤が続いた。