アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は富士通フロンテックの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■富士通フロンテック 産業・公共システム事業本部 システム事業部 表示技術部 大型映像プロジェクトリーダー 榎本敏(48)
数千のLED素子がまばゆい光を放つ。このパネルはコンピューターにつながっていて、映像や文字を鮮明に映し出す。たくさん並べれば、技術的にはどんなに大型の映像情報表示システムでもつくれる。用途は、野球場のスコアボードから、競馬場や競艇場の大型ビジョン、医療の外来案内表示、空港のフライト情報システムまで、幅広い。
富士通フロンテック(東京都稲城市)の榎本敏は、こうした大型映像表示システムを設計するチームのリーダーだ。部下は5人。
企業や自治体から注文を受け、顧客の要望にぴったり合うものをつくり出す。後から取り換えることが難しい製品だけに、何度も打ち合わせながら、最適なシステムを考える。小型のサンプルで性能を検証後、新潟県燕市の工場で製造する。完成まで3カ月から半年ほどかかる。
完成品を現場に設置するとき、メンバーは作業着にヘルメット姿で臨む。
「これが普段よりもずっと凜々しく見えるんですよ。そこでお客様と一緒に映像を確認していると、開発時の苦労が思い出されて感慨深いものがあります」
1985年に鹿児島県内の工業高校を卒業し、富士通機電(現富士通フロンテック)に入社。以来30年、ずっと表示装置一筋だ。
4年目には、赤、黄緑、オレンジという3色のLEDで、120型(縦約1.8メートル、横約2.4メートル)の表示装置を設計した。当時はまだ青色LEDがなく、表現できる映像には限りがあった。その制限の中で最高のクオリティーを追求した。青色LEDが実用化されると、1年がかりで縦4メートル、横6メートルの巨大なフルカラービジョンの開発を手がけたこともある。
「この仕事は本当におもしろい。とにかく現場が好きなんです」
何度も言葉に熱を込めた。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2015年7月13日号