さらに、このところパパラッチの出没が明らかになった。パパラッチはジョージ王子がキャロルさんやナニーと遊びに行く公園近くに車で張り込んだ。荷台に食料を持ち込んで長時間、超望遠レンズで王子を狙ったという。また他の子どもをおとりに使って、王子をおびき寄せての撮影すら画策した。このようなことが可能なら、誘拐や殺害テロも不可能ではない。そもそもロンドンから約200キロ離れたサンドリンガムに居を構えたのは、一家のプライバシーを守るためだった。パパラッチに追われたダイアナ元妃の苦しみを知り尽くしているウィリアム王子の決定でもある。子ども2人に万が一何かあったらと、キャサリン妃はノイローゼ気味である。

●髪形にケチ ウエッジに文句

 サンドリンガムに生活の拠点をおいたもう一つの理由は、王室関係者が口にするいじめともとれる言葉から妃を遠ざけるためだった。妃の自慢のヘアについても、「長すぎる。見苦しいのですっきりとカットすべき」「スカート丈が短すぎる」「ウエッジヒールはみっともない」という些末な批判をする。ウィリアム王子は物理的に距離を取り、妻を守ろうとした。すると逆に妃が友人の結婚式をドタキャンしたことを挙げ、「王子は妃を甘やかしている。それが彼女を出不精で、“見えない妃”にする結果になった」など、王子に飛び火するようになった。

 状況打開にまず手を打ったのは女王だった。9月9日の在位期間記念日に王室の家族と共に夕食を取るようキャサリン妃に招待状を送った。これをきっかけに妃も産休終了を決意、9月17日には青少年の精神衛生を分析、健全な生育に導くロンドンのアンナ・フロイト・センターを訪問、翌18日にはラグビーワールドカップの開会式に臨席した。その後も青少年のメンタルヘルスに主眼を置いた公務を続ける。

 王子は自分自身の緊急ヘリコプターや女王らが乗降する場合をのぞいて、邸宅上空の1.5マイル(約2414メートル)の範囲はドローンを含めいっさいの飛行禁止を申し入れた。

 ボディーランゲージの専門家が結婚4年を過ぎた2人の仲を読み解いたところ、ジョークを交わして笑いあい、身体に何げなく触れあう様子から、親友のような理想の夫婦と太鼓判を押している。10月には中国の習近平国家主席が国賓としてイギリスを訪問。バッキンガム宮殿での晩餐会は妃の晩餐会デビューとあって、ティアラやドレスへの関心が盛り上がっている。キャサリン妃の評判と人気は回復してきた。

 ただ、今夏にアンマーホールにテニスコートを約1千万円かけてこしらえる計画が明らかになると、ぜいたく批判の声が上がった。11月には王子一家4人と母・キャロルさん、妹・ピッパさんでカリブ海のムスティーク島へ長期休暇に行く予定だ。来年早々にカリブの島に外遊に出る予定があるため、ミドルトン家恒例の年始めの同島行きを早めたのだ。妃の同島滞在は今年2度目になる。

 周囲の反応などを逐一確かめながらの綱渡りは、今後も続くだろう。

AERA 2015年10月26日号

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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