5年越しのマラソン交渉の末、ようやく大筋合意したTPP。国内農業団体などから反対論が絶えないが、内容を点検すると……。
潮目が変わったのは、4日午前(日本時間4日夜)だった。9月30日から米アトランタで開かれていた環太平洋経済連携協定(TPP)の会合。バイオ医薬品のデータ保護期間をめぐって激しく対立していた米国と豪州が、折り合った。
「大筋合意発表の準備が整っている」。甘利明・TPP担当相が、記者団に話してからほぼ半日停滞し、一瞬「やっぱりダメか」との雰囲気も出たが、何とかゴールにたどり着いた。
TPPとは何だったのか。あえていうと「大山鳴動してネズミ一匹」という感じだろうか。農業への打撃もあるが、壊滅するほどではない。一方で、経済効果はあるが、地味なものだ。
12カ国が国の利益をかけて話し合う。みな何らかの譲歩は避けられない。魔法のような通商交渉はないのだ。
国内農業は、牛肉が犠牲になってコメを守った。牛肉の関税は38.5%が9%になる。政府内でも「説明がつかない」と強い反対論があったが、政治決断で決まった。ただ、9%になるのは協定発効16年目。牛肉生産の5割弱は高級な和牛ですみ分けはできる、という理屈だ。