
愛犬や愛猫が、ひょんなことから逃げ出してしまった。そんな時には、信頼できるその道のプロ「ペット探偵」を探して頼む手がある。
「早期に効率的な捜索を開始すれば、事故や飢えなどにより命を落とすペットを減らせます。失踪から時間を置かないほうが、発見率も上がります」と語るのは、「ペットレスキュー」代表の藤原博史さん(46)。とくに犬は、猫に比べ、失踪場所から遠くに離れていってしまう傾向があるという。早急な失踪情報の拡散が肝心だ。
藤原さんは20年のベテラン。2千匹を超えるペットを捜索してきた。発見率は、猫で8割、犬で7割を誇るが、鳥では3割にとどまるという。
「室内で飼育されていた鳥は、飛び方が不自然で目立つため、カラスなどに空中で狙われやすい。長距離を飛ぶ体力もないので、地面に降りて猫に襲われることもあります。鳥は、遺体で見つかったり、そもそも空を飛んで逃げてしまうため見つからなかったりする可能性が高いことを、飼い主に伝えています」
ウサギやプレーリードッグやフェレットなど、小動物の捜索依頼もある。しかし、例えばフェレットは気温28度で熱中症になるほど暑さに弱い。小動物では、失踪した季節や周辺環境によって、飼い主のもとに戻れる可能性は異なってくるという。
東京都中野区の男性Aさん(41)は、フェレットを何匹も家族同然に飼ってきた。生後半年のフェレットが、室内で放している際に網戸を開けて逃げてしまったという。妻(31)は、寝食を惜しんで貼り紙をしたり、夜中に捜し歩いたりした。
「5日経っても見つけられずに泣いている妻の姿を見ていたら、3日間で10万円近くの出費にはなるけど、藤原さんへ依頼しようと決めました」
Aさんの妻も、「プロに捜してもらって見つからなければ、心の整理がつく」と言う。筆者は、そのフェレットの2日目の捜索に同行した。
藤原さんは、フェレットが移動しそうな地域を見定めたうえで、地図を片手に、作成したチラシを次々と投函していく。その間も、家と家の隙間、軒下、物置の下、排水溝の中、庭先の穴などを、懐中電灯や鏡などの道具を使って、しゃがんだり寝そべったりしながら、フェレットがいないか確認する。住民への聞き込みも行う。
「猫捜しでも同様ですが、いずれ姿を現しそうだと感じた場所には、捕獲器を設置します」
もっとも、捜索の様子から、ペット探偵が不審者と思われても不思議ではない。藤原さんが苦笑しながら言う。
「警察官から職務質問を受けることは日常茶飯事です。山林で犬を捜していたときは、シカと間違えられ、猟師に銃で撃たれそうにもなりました。排水溝の中に入り、全身がどぶ臭くなることも。それでも、ペットが見つかると依頼者に感謝されますし、再会のシーンではいつも感動します。だから、“3K”でも続けられるのでしょう」
結局、Aさんのフェレットは見つからなかったが、飼い主の「逃がさない努力」が何より大切だと、藤原さんは強調した。
※AERA 2015年10月5日号より抜粋