
東京五輪エンブレムとベルギーの劇場ロゴとの類似問題に揺れた1カ月余。ついに使用中止が決まった。騒動は何をもたらしたのか。
「五輪エンブレム使用中止へ」
ニュース速報が流れた9月1日昼すぎ。2ちゃんねるには、「大勝利!」「中止おめ!」といったおめでたコメントが躍った。佐野研二郎氏デザインの東京五輪エンブレムと、ベルギー・リエージュ劇場のロゴとの類似問題が持ち上がってからというもの、彼らはネットの画像検索機能を武器に、佐野氏のボロをつぎつぎ引っ張り出すことで、エンブレムの正当性を全力で否定してきた。
サントリーのトートバッグに使われたフランスパンの元ネタ画像も、8月28日に公表された佐野氏の原案にそっくりなポスターも、エンブレム選考過程で佐野氏が示した使用イメージ写真の無断転用も、あれよあれよという間に彼らが見つけてきた。
東京五輪組織委員会がエンブレムの使用中止を考えるようになったのは、エンブレムと劇場ロゴの類似を認めたからではない。あくまでも、「国民の理解を得られなくなった」からで、それは「使用イメージの無断転用」「原案の類似」が発覚したことがきっかけだった、と武藤敏郎事務総長は語っている。結果としては、ネットの声に従った形だ。
組織委がいまも「似ていない」と胸を張る根拠の一つは、法律。日本弁理士会執行理事の本多敬子弁理士は言う。