東芝の信頼が失墜した。つまずきは、あの巨額買収だった。原子力事業で世界に打って出た結果、経営は大きく狂った。
日本を代表するエクセレントカンパニーが、なぜ全社ぐるみの「粉飾決算」に突き進んだのか。原子力事業部で元社長の佐々木則夫氏と机を並べた東芝OBは、こう打ち明ける。
「2006年に決まった米国の原発メーカー、ウェスチングハウス(WH)の買収から東芝の経営は狂い始めました。三菱重工業に決まりかけていた案件を横取りした買収でした。そのために破格の金額を投じた。原発というリスクの高い事業に社運をかけた経営の失敗です」
6千億円を超える巨額買収は、「その半分でも高すぎる」と本命の三菱重工を啞然とさせた。
「当時、社長だった西田(厚聡(あつとし))さんの頭にあったのは日立製作所です。原発の市場を取って日立を突き放そう、と考えたのでしょう」(前出の東芝OB)
日立とは、電機から半導体まであらゆる分野でぶつかり、競い合うライバルだった。