自動車や鉄道など、乗り物の研究は、私たちの生活にも直接影響をもたらすものだ。そんな乗り物の現場で活躍するリケジョを追った。
乗り物に、いままでにない“乗り心地”を追求するリケジョがいる。飛行機のシートについているモニターや座席などをより快適にするための改良に携わっているのが、全日本空輸の古賀千科子(38)だ。
新しい航空機を発注するときに、乗客からの乗り心地に対する感想や航空機を使ってみた時の改善点を、航空機メーカーに伝え、設計に生かしてもらうのが古賀の仕事だ。シートの種類、客室の内装、エンターテインメント用モニターのサイズ、お手洗いのレイアウト、乗務員の使う台所の仕様など、調整することは多岐にわたる。収益性なども考慮しながら、室内全体の仕様を決めていく。いわば、航空会社と航空機メーカーの橋渡し役だ。
直前の部署では、客室の環境について技術面から考える仕事をしてきた。たとえば、「もう少し大きいモニターがほしい」という要望があったとする。その際、モニターを大きくしても電力は足りるかなど、技術的に可能かを検討する。
「現在の部署に来るまではずっと整備や技術に関わる仕事をしてきました。今は調整が主な仕事なので、入社してはじめて、文系に近い仕事をしています。アプローチが違うだけで、目指すものは同じです」
文系的仕事の難しさは、答えが一つではないことだという。
「客室の好みは人それぞれだし、同じ人であっても、気分によって感じ方が違うことがある。正解がないことが大変ですね」
※AERA 2015年7月27日号より抜粋