オズボーン氏が唱える「人民元ビジネス」の中核は、「オフショア(沖合)取引」だ。銀行は金融街にあっても、口座は「国外」扱い。つまり、税金や規制の対象にならない金融取引をロンドンで行おうという構想だ。

 それぞれの国には自国通貨がある。日本の銀行が円取引で儲けるように、どの国でも取引は自国通貨だ。例外がある。「基軸通貨」のドルだ。よその国でもドルで決済できる。世界通貨となったドルは海外に流れ出て、ロンドンに「ユーロドル市場」ができた。ドル以前の基軸通貨だったポンドで金融技術を磨いたシティーは、ドルを扱って繁栄を続けた。そしてシティーは今、「ユーロ人民元市場」に狙いを定める。世界通貨の行方をにらみ、オズボーン氏はAIIBへの参加を決めたのだろう。

AERA 2015年4月20日号より抜粋