「イスラム国」と戦う国々に2億ドルの支援を表明した首相スピーチをはじめ、人質事件の検証作業が政府などで動き出した。2人の犠牲を中東の発展につなげることができるか/2月2日、ヨルダンのアンマンで (c)朝日新聞社 @@写禁
<br />
「イスラム国」と戦う国々に2億ドルの支援を表明した首相スピーチをはじめ、人質事件の検証作業が政府などで動き出した。2人の犠牲を中東の発展につなげることができるか/2月2日、ヨルダンのアンマンで (c)朝日新聞社 @@写禁
この記事の写真をすべて見る

 イスラム国から人質を救うことができなかった日本政府。その一連の動きを、識者はどう見るのか。

「責任は、すべからく私にある」

 4日の衆院予算委員会。安倍首相は、後藤さんらの殺害についてこう語った。だが、責任の有無を論じるにも、何が起きたのかを検証しなければ意味がない。事件の一連の経緯にはまだ解けないナゾがいくつもある。

 最大の疑問点は、人質の存在を知りながら、安倍首相がエジプトでの演説でイスラム国対策として「2億ドル支援」を打ち出した点だ。確かに、難民などを助ける「非軍事的支援」であると明確に伝えたが、イスラム国は「ABE」と「JAPAN」を敵視し、身代金を要求した。

 飯塚正人・東京外国語大学教授は、安倍首相が「ISIL(イスラム国の別称)がもたらす脅威を少しでも食い止める」と訴えた点が、あまりにも外交センスに欠けていたと批判する。

「日本人なら憲法の縛りなどから軍事的な意図がないことはわかるが、中東でイスラム国の名前を出して訴えれば、相手側には当然、軍事援助だと聞こえる。演説で余計なことは言わず、難民支援だけを伝えればよかった。彼らに大義名分を与えた」

 もう一つ疑問点がある。最初の脅迫ビデオの公開後、イスラエル国旗の前で安倍首相がイスラム国批判の演説を行った点は総じて評判が悪い。松富重夫・駐イスラエル大使は中東アフリカ局長も経験したアラブ通だ。

「松富大使にしては軽率なミスだった。事態が一段落したら、大使の責任が問われることになるでしょう」(外務省関係者)

 中東通の大野元裕・民主党参院議員もこう指摘する。

「テロとの戦いで人道支援はありですが、その説明をする場が、イスラエルの国旗を背にしていたのは、正直なんでかなあと思った。会見場ではなく、ぶら下がりでやる手もあった。不用意だったと言わざるを得ない」

AERA 2015年2月16日号より抜粋