パッと見は同じデザインなのに、価格は10分の1。家具の世界で、そんなケースが続出している。医薬品同様の「ジェネリック家具」だ。
家具好きでなくても、「イームズ」という言葉を聞いたことのある人は多いはず。モダンデザインのパイオニアとして1960~70年代に活躍したチャールズ&レイ・イームズ夫妻がデザインしたものを指し、体を包み込むデザインのシェルチェアや、オットマン(足置き)付きでどっしりとした黒革のラウンジチェアなどが有名だ。
ハーマンミラー社が販売を始めて半世紀。シェルチェアは4万~8万円、ラウンジチェアは60万~100万円と高価だが人気は高く、皇居を望む東京・丸の内の直営店でもコンスタントに売れているという。
しかし最近、ネット上を中心に、同じように見えるのにグッと低価格な商品を多く見かけるようになった。4万円を切るラウンジチェアもある。「ジェネリック家具」と呼ばれるものだ。
意匠権の切れた有名デザイナーの家具を複製したもので、正規メーカーに比べ低価格で販売される。「リプロダクト品」と呼ばれることもある。知的財産権に詳しい骨董通り法律事務所の諏訪公一弁護士によれば、斬新なデザインの工業製品に適用される「意匠権」が保護されるのは、国内では特許庁の登録から20年、米国では14年、ヨーロッパだと最長25年だ。
国に先駆けて2003年にジェネリック家具の販売を始めた川口タンス店(福島県郡山市)は、本革を使ったラウンジチェアのジェネリック品を20万円前後で販売している。中国の提携工場からの直販によるコストカットやコンテナ買いで低価格を実現した。東京支店長の橋本広治さんは言う。
「もちろん正規商品とまったく同じではありません。ただ、できるだけ近い品質の商品を適正価格で多くのお客さまに提供したいと思っています」
買うときに注意すべきことはあるのだろうか。この数年で60件ほど、ジェネリック家具の修理の問い合わせを受けたという安田屋家具店(岐阜市)の鷲見(すみ)浩一社長は、「まず、修理はできないと思って買ってほしい」と話す。パーツがあれば直せるが、用意されていないケースが多かった。保証期間や修理対応は、購入前に確認すべきだろう。
※AERA 2015年2月2日号より抜粋