向井理さんがさまざまなフィールドで活躍する同世代のトップランナー12人に、仕事のこだわりについてインタビューしたアエラでの連載「仕事の理」が書籍化。単行本『ぼくらは働く、未来をつくる。』に収録したスペシャル企画で向井さんは、農業に関する事業を行うマイファーム代表の西辻一真さん、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所研究員の古屋将太さん、ミドリムシの研究を行うユーグレナ代表取締役社長・出雲充さん、若者の就労支援を行う認定NPO法人育て上げネット理事長の工藤啓さんらと、「未来」について語り合った。

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西辻:僕たちに共通するキーワードの一つは、「魂」とか「哲学」なのかもしれないですね。ビジネスをしていく上で、儲けよりも思いを大切にする。僕も10年後も今と変わらず、自分で農業をする“自産自消”の社会を促進していきたいというシンプルな気持ちでいます。そうすることで、世界の食糧問題の解決にもなる。出雲さんの取り組みとも同じ方向を向いていると思います。

出雲:そうですね。僕も10年後の目標を一言で表すならば、やはり創業時と変わらず「ミドリムシで人と地球を健康にしたい」に尽きます。目前にあるゴールとしては、2020年の東京五輪までにジェット機燃料を開発すること。内閣府の「革新的研究開発推進プログラム」の事業としてリストアップしていただいているので、絶対に実現しないといけないという思いです。

向井:皆さんが活躍しているフィールドは共通するテーマも多くて、今後、何かを一緒にやるという可能性も生まれそうですね。

古屋:実際、農業関係の方々で自然エネルギー開発に取り組みたいという人も増えてきているので、今度じっくり西辻さんにも相談しようかなと思っていたところです。

西辻:ぜひ連絡してください。

向井:お、何か始まろうとしている(笑)。エネルギー分野の環境変化もこれから10年で加速しそうですね。

古屋:スピードが格段に上がると思います。僕はその変化をど真ん中で目撃しながら、変化の一部でもある。これまでにない成果が国内で積み上がってきているのは素晴らしいことですが、一方で新たな課題も見えてきています。地域密着型の自然エネルギー開発を、持続可能な形で実現していきたいですね。

向井:「持続可能であること」ってキーワードですね。どんなに思いが強くても、続けられる形でないと意味がない。

工藤:僕は法人としての活動を始めて10年が経ち、自分自身の働き方も持続可能な形にシフトしていくことが大事だなと感じるようになりました。もともと「経営者一人に依存する組織は弱い」という考えで権限を周囲に渡してきましたが、自分自身のゆとりを大事にしていきたいと思っています。「良い加減に、いい加減」を実践できればいいかなって。

向井:皆さんが10年後について語るのを聞いて、いい意味で「今と変わらないんだな」と感じました。今と未来が「点と点」ではなく、「同じ線の上」にある。それは、きっと今やっていることが、自分自身の信念と一致しているからじゃないかと思いました。だからこそ、継続に意味がある。僕自身も10年後を語るとしたら、「続けていくこと」を大事にしたいですね。続けるためには、常に自分を磨かなければいけないわけで、すごく難しいことでもありますが…。

AERA 2014年11月24日号より抜粋

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