日銀の金融緩和により、円安・株高に沸いた日本経済。だがその狙いはやはり再増税にあるようで、専門家の中には安倍政権での増税を断言する声もある。
黒田東彦(はるひこ)総裁は金融政策決定会合後の会見で、長期国債の買い入れ額を年30兆円増やして年80兆円にするなどの追加緩和策を発表し、こう強調した。
「デフレ脱却に向けた日銀の揺るぎない決意を改めて表明するものだ」
日銀が続ける“異次元緩和”は、国の借金である国債などを民間金融機関からどんどん買い入れ、市中にお金をあふれかえらせるというもの。これによって金融機関が企業や個人への貸し出しを増やしたり、「これから物価が上がりそうだから、その前に買い物しておこう。工場やお店を大きくしよう」と考える人が増えたりして、景気が良くなる効果を狙った政策だ。
追加緩和を繰り出した背景には、4月の消費増税後、景気が予想以上に停滞していることがある。もっとも、黒田総裁は表向き、景気や物価への強気の見通しを崩していなかったため、追加緩和は驚きをもって迎えられたというわけだ。
では、なぜこのタイミングで「黒田バズーカ第2弾」はぶっ放されたのか。ささやかれているのが、「安倍首相が消費税の再増税を決断するための援護射撃」という見方だ。
消費税率は来年10月に10%へ上がると法律で定められているが、それには「経済状況の好転」が条件。安倍晋三首相は今後発表される7~9月期の国内総生産(GDP)といった経済指標をにらみながら、12月上旬に予定通り再増税するか、延期するか決める見通しだ。
ところが、10月下旬には、再増税延期を求める40人ほどの自民党議員が会合を開くなど、慎重派の動きが活発化してきた。政治評論家の有馬晴海氏は、こう言い切る。
「安倍首相は予定通りの再増税を決断します。経済は政権の生命線。もし再増税を延期すれば景気悪化を自ら認めることになる。日銀が政府と歩調を合わせているのも明らかです」
※AERA 2014年11月17日号より抜粋