連日伝えられるエボラ出血熱のニュース。現場の状況を、西アフリカ・シエラレオネで治療に従事した日本人看護師、大滝潤子さん(38)に話を聞いた。

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──防護服で働くのは大変そうです。

 施設は2区画に分かれています。ユニホームで打ち合わせなどをする「ローリスクエリア」と、患者さんがいる「ハイリスクエリア」。ハイリスクエリアには防護服で入ります。防護服を着るだけで、10分くらいかかり、汗ダラダラになる。その格好で暑いテントの中に入るのですが、いくら曇り止めをしても、ゴーグルは曇るし、自分が脱水状態になっていくのがわかる。テントから出ると、まるでプールから出てきた感じ。消耗します。体調にもよりますが、脱水で少し気持ち悪くなった時は、経口補水液や水を飲み、しばらくぐったりします。

 ハイリスクエリアに入るのは、1回1時間。体力や集中力が低下するので、1日3回までにしなさいと言われています。でも、自分の体調と相談しながら、5回入ったこともあります。

──まだエボラ出血熱の治療薬はなく、治療といってもできることは限られていますね。

 熱が出たら解熱剤、痛みがあれば鎮痛剤と、症状ごとに対応します。ビタミン剤や栄養補助食品もさしあげます。患者さんが経口補水液を自分で飲めなくなったら、点滴です。嘔吐や下痢で体が汚れたら、体をきれいにする。体をきれいにすることは、人間の尊厳にかかわることですから、たいへんな作業ではありますが、大事にしていました。吐いたものなどにさわる場合は、まず消毒してから処理します。

──感染しないよう、どのように注意を払ったのですか?

 ハイリスクエリアには、最低2人一組で入ります。仕事のパートナーであるとともに、お互いの監視をします。ゴーグルがずれてないか、疲れすぎてないか、時間がかかりすぎていないかなどチェックします。パートナーがいれば、すぐに消毒のスプレーをかけてもらうことができます。私はたいてい、現地のスタッフとペアで入り、患者さんとの間の通訳もしてもらいました。ハイリスクエリアから出る時は、まず上から下まですべて消毒し、それから一つずつ脱いでいきます。脱ぐ作業ごとに必ず、手を洗います。脱いだゴーグルや長靴などは消毒液に浸します。

──以前は致死率9割といわれていましたが、改善しているようですね。

 何もしないと致死率90%といわれましたが、私のいた施設では65%。エボラにかかっても、治って元気に退院していく人もいます。退院する人は、「バイカカカ」と言って送り出した。現地の言葉で「ありがとう」という意味です。治ってくれてありがとう、という気持ちを込めました。退院した人を見るのはうれしいことです。1日に5人退院した日もありました。患者さんに抵抗力があるか、感染初期に治療を始められたか、適切な治療だったか、栄養と水分をちゃんととれたか…、いろいろな条件があるでしょう。

AERA 2014年11月3日号より抜粋