9月9日に大連理工大学で行われた共同学部の開講式。立命館大学の大久保英嗣教授(共同学部の日本側学部長)が学部の方針を説明すると、100人の新入生たちが真剣な表情で耳を傾けた(撮影/編集部・野嶋剛)
<br />
9月9日に大連理工大学で行われた共同学部の開講式。立命館大学の大久保英嗣教授(共同学部の日本側学部長)が学部の方針を説明すると、100人の新入生たちが真剣な表情で耳を傾けた(撮影/編集部・野嶋剛)

 日本の若者の人口も今や頭打ち。各大学とも生き残り策に必死だ。経済成長著しい中国はその主要な舞台。模索する現場を歩いた。

 かなり不思議な光景だった。

「クライアント・サーバーモデルには、同期型と応答型があります。その違いは…」

 中国の大学で、中国人の学生に向かって、日本人の教員が、日本語で、難解な概念を教えている。日本語でも生まれながらの文系人間の私にはさっぱり意味が分からなかったが、中国人たちはしっかりとした日本語で質問を浴びせ、活発に議論を交わしていた。

 中国・大連理工大学のキャンパスでは、今年からこれが日常の光景だ。

 大連理工大学は、地元で「大工(ダーコン)」の愛称で呼ばれ、全国有数の理工系大学として知られる。

 立命館大学は、この大連理工大学と共同学部「国際情報ソフトウェア学部」をこのほど立ち上げた。日本の大学が中国の大学と共同学部をつくるのは初めてのことだ。過去には単位や学位の共有はあったが、学部の共同運営は日中大学協力として未体験の領域になる。

 年間で延べ20人ほどの教員を大連に派遣する立命館にとっても一つの「賭け」。新学部の日本側学部長に就いた大久保英嗣教授は語る。

「大学の生き残りが厳しくなるなか、拡大路線から質の強化に向かう時代になった。グローバル化は必須。日本の大学の海外進出のモデルにしたい」

 両大学はこの2年、少人数のパイロットコースで試行錯誤を続けた。冒頭の光景は同コースで訓練を経た学生たちの授業の様子だ。そして中国の新学期にあたる9月、100人の中国人の若者が1期生として入学した。日本語を学びながらソフトウエア関連の専門知識も身につけ、2年後、成績などで選ばれた40人が立命館大学に編入する。その40人は卒業時、立命館と大連理工の二つの学位を受け取る。

「単なるITの専門家ではなく、日本の文化や社会を理解し、国際的に活躍できるマネジャークラスの人材」(大久保教授)を育てるプランだ。

AERA 2014年10月13日号より抜粋