神戸市長田区の小1女児が行方不明になっていた事件は、幼い子どもを持つ親たちに衝撃を与えた。行方不明になってから13日目の9月23日、切断されポリ袋に入れられた遺体が雑木林で発見された。
少女は行方不明当日の午後2時45分ごろに小学校を出て祖母宅に帰宅。ランドセルを置いた後、1人で近くの友人宅へ向かったという。
祖母宅から小学校までは約300メートル。死体遺棄容疑で逮捕された君野康弘容疑者の家までは約100メートル。事件は、極めて狭い範囲で起きた。君野容疑者は自宅でネコを飼っていて、美玲さんもネコ好きだったことから、ネコが2人の接点になったのではないか、とも報じられている。
2001年に大阪教育大学附属池田小学校で起きた児童殺傷事件をきっかけに市民の防犯意識が高まり、連れ去りが多発した04年以降、子どもたちの安全をどう守るかが社会問題となった。
子どもに携帯電話を持たせたり、ランドセルに防犯ブザーを付けたりして自衛する家庭も増えた。だが、今回狙われたのは、子どもたちが大人に見守られながら帰宅し、自宅にランドセルを置いた後の時間帯だ。
警察庁の過去10年間のまとめでは、13歳未満の子どもの連れ去りや誘拐は04年の141件がピーク。08年に63件まで減少したが、ここ数年は90件前後で推移している。昨年発生した94件では、被害にあった子どもの65%が女児で、発生時間がわかった62件のうち約半数は午後2時から6時の間に起きていた。発生場所の多くは路上や共同住宅。「夕方の自宅周辺」には多くの危険が潜んでいるのだ。
子どもの安全に詳しいステップ総合研究所の清永奈穂さんは、“隙間”の時間が多い放課後の危険性を指摘する。
「これまでの見守りは登下校に主眼が置かれ、バランスを欠いていた。暗くなれば危険という意識が働いて子どもを迎えに行く保護者も多くなるが、帰宅後、暗くなるまでの夕方の時間帯は、子どもを見守る目や意識が手薄になる。夕食前で主婦も忙しい。比較的日が長い季節は、明るいからと安心してしまう」
※AERA 2014年10月6日号より抜粋