働くことに悩みを抱えた若者を、さらに悩ませる就労支援がある。国の「サポステ事業」だ。すべてがそうだとは言わないが、制度的なひずみを感じずにはいられない。
30代の女性Bさんは、バブル崩壊後の「失われた10年」に就職できなかった「ロスジェネ世代」だ。大学卒業後、5~6年ひきこもっていたが、父親の勧めでサポステへ相談に行った。
Bさんはこの時点で、心身に異常があったわけではない。だが、質問に従って、過去の通院歴や、服用した薬などの情報を正直に話した。すると、サポステのキャリアコンサルタントの態度が変わった。
「それで、今日は何しにきたの?」「働きたいなら主治医の許可をもらってください」
翌日、父親が抗議に行った。そのキャリアコンサルタントは「お嬢さん、病気なんですよ」「対象にしているのは、社会復帰の可能性のある健全なひきこもり層です」と話したという。
その後、サポステに頼らず地方公務員になったBさんは言う。
「結局、サポステには不信感しか残りませんでした」
ひきこもり状態から抜け出したいBさんにとって、サポステが“助け”になることはなかった。そんなサポステには毎年、巨額の税金が投入されている。
2013年度のサポステ事業の予算は約44億円。翌年度の予算は、厚労省の行政事業レビューで「有効とは言い難い」という評価を受けたため、いったんはゼロになった。しかし、補正予算で約35億円が“復活”した。Bさんは言う。
「そもそもサポステの対応実績が信用に値するのか、非常に疑問。職員が『電話では相談を受け付けていませんから』と言って電話を切り、『いまみたいな電話も相談実績の数に入れちゃっていいんじゃない?』と、笑いながら話している光景を見てしまったんです。まさに“名ばかり支援”だと思いました」
※AERA 2014年8月25日号より抜粋