宇宙をめぐる覇権争いが熱を帯びている。米国、旧ソ連に続き、中国、インドにも動きがみられる。
米国、旧ソ連に続き世界で3番目に探査機の着陸を成功させた中国は2017年ごろに月のサンプルを持ち帰り、25年ごろに月面に人間を送り込む構想を持つ。
インドが将来、本格的な月探査に乗り出すのではないかとの見方もある。インドは08年、同国初の無人月探査機チャンドラヤーン1号の打ち上げに成功、月の観測調査で大きな成果を挙げた。中国やインドの最終的な狙いは月の資源にあるともいわれる。ロシアも欧州と協力した月探査の構想を持っている。
実は米国でも再び月に人を送り込む計画が進んでいた。ブッシュ前大統領04年、20年をめどに新型のロケットと宇宙船を打ち上げる計画を発表。しかし、NASAの予算難で開発が遅れ、オバマ大統領になって計画は撤回された。月の資源開発で採算が取れる可能性は少なく、すでに40年以上前に6回も行っているのに再び多額の税金を投じて行くだけの価値はないとの判断があったと言われている。
もちろん米国も月探査をあきらめたわけではない。19年を目標に、水や氷などの資源調査のミッションを検討しており、日本も参加を模索している。
オバマ大統領が月に代わる有人探査の目標に掲げたのが小惑星と火星だ。25年までにまずは小惑星、30年代半ばには火星の軌道(火星の衛星)に人を送るという計画だ。
ただ、どの小惑星に行くかは決まらず、何のために命を懸けて小惑星に行くのかという根本的な疑問も残り、国民の評判はよくない。ロシアに大きな隕石が落ちた昨年、NASAのボールデン長官は、地球に近づく小惑星を捕まえて移動させる新たな技術開発に乗り出すという計画を発表した。だが、やや突拍子もない提案に専門家の間では実現性をいぶかしむ声もある。
停滞感のある米国を尻目に、中国は月探査だけでなく自前の宇宙ステーション建設計画も進めている。
※AERA 2014年8月18日号より抜粋