全般検査は、工場に入った新幹線を1両ずつ台車と切り離す「車体上げ」から本格化する。その後、パンタグラフや連結器、コックピットの各種装置などの機器を外す「機器取り外し」、「車体修繕・塗装」へと移る。

 この間、台車は「台車検修(検査・修繕)」、機器は「機器検修」へと回される。検査や修繕が終わった機器類を再び車体に取り付け、クレーンでつり上げて台車に載せる「車体載せ」を行い、出場前の検査や清掃、そして本線での試運転に入る。

 今回、詳しく見ることができるのは、先ほど目にした「車体載せ」。鉄道マニアの間で「アヒル口」とも俗称される先頭車両は、移動開始から約10分後、用意してあった二つの台車の真上で止まった。ボンネットの先端のカバーは外され、連結器がむき出しになっている。クレーンが少しずつ下ろされ、車体が台車を覆うようにして止まった。

「オーライ、オーライ。はいOKです!」

 待機していた作業員が即座に動きだし、ボルトを締め始めた。

「ここがとても大事です。車体と台車は中心ピンという部品でとめられており、このピンを直径3、4センチの太いボルト2本で確実に取り付けなければなりません。仕上げとして、ボルトを針金でしっかり縛ります。車体を支える一番の心臓部。脱落するようなことがあったら大変ですから」

 傍らにいた担当作業員が、その重要性を力説した。時速約300キロで走行する約40トンの巨体を支える、命綱ともいえる極太ボルトには、ここで働く1500人の作業員の魂が宿っているかのように思えてくる。

AERA 2014年8月25日号より抜粋