7月27日、足利工業大学で開催された看護学部のオープンキャンパス。説明会の後、体験授業が行われた。ガウンテクニックを体験する参加した高校生たち(写真 今祥雄)
7月27日、足利工業大学で開催された看護学部のオープンキャンパス。説明会の後、体験授業が行われた。ガウンテクニックを体験する参加した高校生たち(写真 今祥雄)
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オープンキャンパスでは男子生徒の姿も目立った。地元の高校3年の男子は、「誰にでも親しまれる看護師になりたい」。「子どもの成長・発育を学ぶ」体験授業/足利工業大学(写真 今祥雄)
オープンキャンパスでは男子生徒の姿も目立った。地元の高校3年の男子は、「誰にでも親しまれる看護師になりたい」。「子どもの成長・発育を学ぶ」体験授業/足利工業大学(写真 今祥雄)
「50年後の自分を体験する」模擬授業。参加した高校生たちは興味津々だった/足利工業大学(写真 今祥雄)
「50年後の自分を体験する」模擬授業。参加した高校生たちは興味津々だった/足利工業大学(写真 今祥雄)

 大学の看護学科新設ラッシュで看護師が今後急増しそうだ。特に病院では、将来深刻な人余りが予想されている。白衣の天使はいかに生き残ればいいのだろうか。
(編集部 野村昌二)

 11校(1991年度)だったのが、今や226校に(2014年度)──。
 いったい何の数字かといえば、看護学部・学科を設置した看護系大学の数である。97年度以降毎年約10校のペースで増えつづけ、23年間で20倍以上。日本の4年制大学の総数は約770校だから、実に3・4校に1校が看護系学科を持っていることになる。入学定員の数は、558人(91年度)から1万9454人(14年度)と、実に35倍になった。

 少子化もどこ吹く風。大学は今、さながら「看護バブル」ともいえる様相だ。中には、11年度に看護学科を新設した上智大学のように、一見“看護”と縁のなさそうな大学まである。アエラでは、今春看護系学科を新設した17大学にアンケートし、設置理由などを聞いた(文末の資料1参照)。顔ぶれを見ると、北海道から九州・福岡まで全国にまたがる。敦賀市立看護大学(福井県)など3校が単科大学として新設され、奈良学園大学(奈良県)など、これまで医療系学部がなかった大学も新規参入する。そして、ここにも「意外」と思える大学が看護学科を新設している。

●現在は看護師不足だが

 7月下旬の日曜。この春、看護学部を新設した足利工業大学(栃木県足利市)のオープンキャンパスが開かれた。
 開始直前、ゲリラ豪雨に見舞われたにもかかわらず、親子140人近くが参加。
 同大はもともと同じ学校法人傘下の短期大学に看護学科を設置していたが、社会の変化に対応して大学学部への転換を図ったという。
「4年制だと、看護師だけでなく、これから人手不足が心配される保健師の資格も取得できます。保健師としても活躍できる幅の広い看護師になっていただきたい」
 と、荘司和男副学長は大学の使命を語る。 
 実際、看護師不足は深刻だ。
 看護師(准看護師を含む)の数は約144万人(12年)と、9年間で25万人近く増えた。それでも、厚生労働省の「看護職員需給見通し」によれば、15年時点で看護職員(看護師、准看護師、保健師などの総称)の「需要」が約150万1千人なのに対し「供給」は約148万6千人と約1万5千人不足している。アンケートの「看護学部・学科」の新設理由を見ても、
「社会環境の変化と地域における看護師の人材需要に対応」(北海道科学大学)
「地元千葉県をはじめとする社会に貢献」(聖徳大学)
 などと、いずれも不足する看護師への対応を挙げている。
 それにしてもなぜ、大学の数が飽和状態といわれる中、「看護系新設ラッシュ」が起きるのか。
「一言でいうと、看護師不足と大学の学生募集の利害が一致した結果」
 と、教育ジャーナリストの小林哲夫さん。受験生確保に悩む大学にすれば、適当な学部をつくっても受験生が集まらない。また集まっても、就職先がなければいずれ定員割れというリスクに悩むことになる。その点、看護系であれば受験生は集まり就職先にも困らない。大学にとって看護系学科は、学生を確実に集められる「おいしい市場」(関係者)となったのだ。

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