夫婦間でさえ、何となく話しづらいおサイフのこと。クロス・マーケティングの調査によると、家計の管理方法は、夫婦のどちらかがサイフのひもを握るやり方が全体の6割強で、残りは項目別に分担したり共同のサイフを作っているという。またなかには、こんな形で管理をする夫婦もいるようだ。

「そろそろ年末調整の時期だよ」

 IT企業に勤める女性(35)が休日に号令をかけると、夫(34)はレシートの束とノートパソコンを抱え、書斎に引きこもった。「豆腐」「オムツ」「レンタカー」…。家計簿に使途と金額を打ち込むためだ。

 自分のサイフから1年間に支出した食材や雑貨などを「これは家族のために使ったものだ!」と証明し、精算する。まるで会社の経理処理と同じ「経費精算型」の家計管理。家計簿をつけなければ損をしてしまう仕組みだ。

 どこかの県議のような、領収書のない支出は原則、認められない。ほぼ1日かけて家計簿を埋め、家計支出として正当だとパートナーに認められれば、晴れて数十万円におよぶ「還付金」を受け取れる。もちろん夫婦ともに条件は同じで、女性も日々レシート収集に余念がない。

 なぜ、こんな面倒なシステムにしているのか。夫婦それぞれが自由に使えるお金を手元にたくさん持っておくためだ。

「お金を使うことで、人間って気分よくいられる。これは物欲とは別で、スーパーに寄って家族の食材を買う行為でもいいんだと思うんです。お小遣い制で愛妻弁当を持たされている男性は、稼いだお金を使う機会がないことに不満を感じてしまうのでは?」

 夫が「何か買って帰ろうか」とメールをよこす時は、買い物欲が高まっているサイン。コンビニでお菓子を買われるよりは、割安なスーパーで生活必需品を買ってもらえるように、急いで肉や豆腐をリクエストする。どうせ後で精算するからお互いに気楽だ。結婚5年目にして夫が食材の買い物に慣れ、ほどよい価格帯がわかるようになるという効果もあった。

AERA 2014年7月28日号より抜粋