新卒でも外国人を採用する日本企業が増えてきた。しかしせっかく外国人を採用しても、辞められては元も子もない。そんな事例が実は少なくない。

「入社して5年後まで残っているのは50%」と嘆くのは、大手電機メーカーの人事担当者だ。

 売上高の半分強を海外から稼ぐグローバル企業だけに、毎年、海外で新卒を数十人、直接採用している。そういう意味では、先進的な企業なのだが、それでも5年もせずに辞めてしまう最大の理由は、「言葉の壁」。海外で直接採用するため、日本語研修も手厚く行っているが、会議での発言に加え、次々とメールに対応しなければならない「現実」に打ちひしがれ、辞めてしまうのだという。

 年功序列賃金、終身雇用、「あ・うん」の呼吸。そうした日本独特の企業文化も、海外のエリートを遠ざけている。

「受け入れ態勢が未熟でした」

あるサービス業の社長は、そう漏らす。将来のアジア進出をねらい、中国の学生を採用したが、わずか1年で辞めてしまったという。日本語も堪能で、営業成績もトップクラスだったが、ある日、こう尋ねられた。

「自分はいつになったら課長になれるのでしょうか」

 社長が年功色の強い自社の職能資格制度を説明したところ、「では、あと5年以上かかるんですね」と切り返された。ほどなくして辞表が届いた。

 海外のエリートは上昇志向が強い。日本人のような「就社」意識はなく、よりレベルの高いキャリアが積めると思えば転職もいとわない。将来のキャリアパスを示せなければ、あっさりと見限られてしまうわけだ。

AERA  2014年7月14日号より抜粋