かつて女性たちは、結婚相手に「三高」を求めた。いまも婚活サイトや結婚相談所では、「男性の安定収入」が大前提。あえて無職や非正規雇用の男性を選ぶ女性はいない。

 しかし経済的に自立した女性にとって、「男性の安定収入」はもはや必要条件ではない。求めるのは、自分の人生設計に寄り添ってくれるパートナー。たとえ、その男性との結婚が揶揄(やゆ)や軽蔑の対象となっても、だ。

「自分にできる支援は、彼との結婚だった」

 そう話すのは、インテリア雑貨店の女性店長(35)だ。午前9時過ぎに家を出て、再び自宅に戻るのは午後10時近く。疲れ切って、自宅そばのカレー店で夕食を済ませることが多かった。

 そのカレー店で、カウンター越しにカタコトの日本語で「オツカレサマデス」と声をかけてきたのが彼だった。バングラデシュ出身。南国特有のあけっぴろげな彼の笑顔が好きになり、いつしか一日の終わりにその笑顔を見るのが楽しみになっていた。もちろん、「それだけの関係」のつもりだった。

 ある日、近所のスーパーで買い出し中の彼に会う。気づくと深く話し込んでいた。日本に来るために多額の借金をしていて、それを返していること。カレー店のオーナーにだまされて、給料はほとんどもらえないこと。店長として、日頃から部下の相談を受けることも多い彼女は、この話に義憤を感じ、何とかしなければ、と思ったという。

次のページ