今や日本でも3組に1組が離婚する時代。夫婦が衝突するけんかの原因について、情報誌「R25」の調査によると、言い方が乱暴、キツいなど「言葉」がトップだった

夫婦カウンセリングを手掛ける精神科医の田村毅さん(56)は、言葉をめぐる昨今の夫婦事情をこう説明する。

「日本の男性は、長い間刷り込まれた男尊女卑の感覚が、感情的になると表出しがち。妻を傷つけたと思ったら謝ればいいのに、それができない夫が多い。強者であることがアイデンティティーなので、自分のミスを認めたり、弱さや欠点を受け入れたりできない。妻の気持ちを思いやる前に、家族のために働いている自分の立場を主張し“俺様”になっていく。そのあたりをクリアできれば、妻にも子どもにも愛される、賢く器の大きい夫になれるのに」

 このような背景から妻に対し虚勢を張りがちな夫たちだが、自尊心を傷つけられると頑なになってしまう。田村さんに相談に来た40代夫婦。当初の悩みは長男の非行だった。ところが、妻側が「マザコンの夫が実家優先で私を守ってくれない」と不満を言い始めた。子の歪みは夫婦の歪み。子どもの混乱は夫婦関係のまずさが影響する場合が多い。

「せっかくやってくれるんだからさ」

 何かにつけ干渉してくる姑をかばう夫の言葉に妻は絶望していたが、そのうち夫も妻が過去に発した言葉のダメージを語り始めた。

「私だったら、もっと稼げるのに」

 実はさかのぼること数年前。妻のささいな言葉が、妻よりも出身大学の偏差値や独身時代の年収が低かった夫のプライドを傷つけていた。冗談のつもりだった妻は、このことを覚えてもいなかったが、根に持つ夫は妻への反発心もあって歩み寄れずにいた。

「男女の溝は深くて複雑。夫は妻に弱みを見せたら負けだと感じがちだが、妻はとっくに夫の弱さを見抜いている。だから、夫は素直に弱みを見せたほうがいい。対する妻は相手の弱みや欠点をガンガン責めず、あなたも大変よねと、まずはいたわり、傾聴する。夫育ては子育てと同じ。自分の手でよき夫に育てようと考えてほしい。それと、他人同士が一緒に暮らすのだから、互いの実家の悪口はご法度です」(田村さん)

AERA AERA 2014年7月21日号より抜粋