STAP(スタップ)細胞の問題が報じられてから、世間の研究不正に対する関心も高まった。研究者によると、研究不正はにはいくつかパターンがあるという。
STAP細胞問題のような、ここまで大きな問題はめったにないが、研究不正はどこでも起こりうる。罰則や規制強化の流れができそうだ。ただ、それだけで研究不正はなくならない。
そう予測するのは、産業技術総合研究所・創薬分子プロファイリング研究センターの夏目徹センター長だ。
夏目さんは42歳まで任期つき契約のポスドクで、4大学、1企業、2国立研究所を渡り歩いた。そのためか、捏造の現場を何度も目にしてきた。
捏造は、大きく4パターンに分けられるという。出来心で、ついデータをいじってしまった「ボトムアップ出来心型」。次は「ボトムアップ確信犯型」。確認の実験を命じられるが、材料が切れて実験できない時などに、どうせバレないとデータを作ってしまう。そして「トップダウン恫喝型」。ボスの思い込みが激しく、こういうデータが出るはずだ、出るまで家に帰るな、などと言われて、泣く泣く捏造に近いことをしてしまう。「トップダウン洗脳型」もある。実験をスキップするとコストが節約できると、捏造を奨励するようなことを言うボスがいる。
実例を見てきた夏目さんがあげる捏造防止策は、「倫理でなく、ビジネスモデルで考える」だ。サイエンスの醍醐味は「思いもよらぬ発見」をすることだ。
「思い通りにならないといってデータを作り、捏造すれば、思いもよらぬ発見から自分たちを遠ざけることになる」と話す。倫理問題ではなく、捏造しないで愚直に問題を掘り下げることが長期的には収益があがる「ビジネスモデル」になると考えてほしいという。
責任著者が責任をとらず、下の人を切り捨てればよいとなると、捏造の温床になりかねない。バイオ実験は言葉にしづらい暗黙知が多く、結果が再現できなくても、実験が下手と言っておしまいにする傾向も捏造の温床だ。技術を可視化し、誰でも再現できるようにする努力も必要だという。
※AERA 2014年6月23日号より抜粋