日本の大学の第二外国語の選択はこの10年、中国語優勢の時代が続いた。フランス語やドイツ語の人気は凋落。「将来性を考えれば中国語を学んでおいて損はない」が、日本社会の共通認識だった。

 ところが、そんな中国語ブームに「終焉」の影が差し込んでいる。

 京都の立命館大学は2007年に訪日した温家宝(ウェンチアパオ)首相が同大学を訪れるなど、中国重視を掲げる大学だが、中国語を第二外国語として履修する学生数はこの2~3年は伸び悩む傾向が続いている。

 この10年でピークは11年の1741人。中国経済への期待論が特に広がっていた時期だ。一昨年は1496人、昨年は1419人と減り続けている。同大学は「日中関係の影響がある一方で、サッカーなどで人気があるスペイン語に流れた部分もある」と分析する。

 実際、スペイン語の履修者が中国語を上回る大学も多いとされる。若手の中国研究者などが多い中国語講師にとっても生活に直結する深刻な問題で、「受け持つ授業のコマを減らされた」「来年は中国語のクラスをやめるかもしれないと大学に言われた」といったうわさ話が飛び交っている。

 駅前にあるような小規模の中国語学校の閉校や合併も相次ぐ。日本で最も古い歴史を持つ中国語学校「日中学院」(東京都文京区)でも、生徒数は例年の800人前後から、現在は100人以上少なくなっている。

 ただ、千葉市美浜区の神田外語大学には中国語専攻があるが、こちらでは志願者数はこの5年間でほとんど変動しておらず、大学側でも減ることを心配していた14年入学分はむしろわずかに増加したという。

 同大学の興梠(こうろぎ)一郎教授は「中国語を専攻する学生に理由を聞くと、中国茶や楽器の二胡、中国のスターなど中国文化全般への興味を持つ人も多く、政治や外交のトラブルに一喜一憂しない感覚がある。中国語学習を単なる実利的な仕事の手段とするのではなく、学生の幅広い関心を育てる部分を強化していく方がいい時代になっている」と話している。

AERA  2014年6月9日号より抜粋