松木安太郎さん(撮影/編集部・井上和典)
松木安太郎さん(撮影/編集部・井上和典)
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「暑苦しい」「うっとうしい」なんて、どこ吹く風。勝利の陰に居酒屋解説あり。松木安太郎さんのサッカー解説で強国撃破だ!

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 サッカー中継の解説における「パイオニア」か、はたまた「イノベーター」か。サッカー解説者の松木安太郎さんのことだ。「シュート打て、打てっ!」「いいよ、いいよー」と、まるで居酒屋で応援しているような雰囲気で盛り上げ、試合を楽しませる--そんな松木流の解説が、W杯を目前に俄然、注目されているのだ。

 4月、W杯関連イベントに出席した松木さんは、テレビ朝日の早河洋社長からこう評された。

「誰もが知っている名調子。心強い12人目の選手」

 そこまで高く称賛されるのは、インターネット上の松木人気を見れば明白だ。松木さんがテレビ解説をする試合では、ツイッターで松木さんの絶叫解説を復唱したり、感想を言ったりする書き込みが激増。松木さんの解説の調子自体が、試合観戦の“盛り上がり度”を示すバロメーターになっている。

 このブームに当の松木さんは、

「ありがたいですねぇ。サッカー中継は、みんなでお酒でも飲みながら観るのが一番好き。みなさんにも自由にサッカーを楽しんでいただきたいですね」

 松木さんの「居酒屋解説」で名高いのは、2011年、中東カタールでのアジア杯。シリア戦で熾烈を極めながらも、2対1で日本が勝利した試合だ。アウェーとはいえ、視聴者も到底納得できない判定が下され、解説の松木さんは連呼した。

「何なんすかこれ」

 ロスタイム6分の表示には、

「ふざけたロスタイムですね~」

 およそサッカー解説者とは思えない言葉で解説したのだ。

 昨秋のオランダ戦でも、MFの本田圭佑が放ったシュートがクロスバーを叩くと、

「ゴールをちょっとずらしたいよねえ」

 と、“迷言”を連発。松木さんは照れながら説明する。

「選手や監督だったころから思っていたこと。『ゴールをちょっとずらせたらなぁ』って。当時は独り言だったつぶやきが、ついつい出てしまう」

 そうはいっても、戦術の解説も必要なのでは?

「サッカーは難しく話そうと思えば、いくらでも難しく話せてしまう。僕は誰にでも楽しんでいただきたい。それに、戦術をあまり解説してしまうと、もし僕が今後、監督になったときに、戦術を読まれてしまうんじゃないかと。だから、あまり言わないほうがいいかなって。ワハハ」

 ここでも松木節全開だ。

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