東京都 小野学園女子中高蛍の中でも、飼育が難しいとされるゲンジボタルを育てている。生徒は毎日来園し、草むしりなどをして環境を整えたり、エサとなるカワニナを与えたりしている。成虫が飛び始めると、学校に電話が殺到するという(撮影/今村拓馬)
東京都 小野学園女子中高
蛍の中でも、飼育が難しいとされるゲンジボタルを育てている。生徒は毎日来園し、草むしりなどをして環境を整えたり、エサとなるカワニナを与えたりしている。成虫が飛び始めると、学校に電話が殺到するという(撮影/今村拓馬)
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 東京都品川区にある大井町自然再生観察園で昨年6月、柔らかな光の軌跡を描きながら蛍が飛んだ。

「こんな都心で蛍が育つなんて」「蛍を見たのは初めて」

 近隣からのべ2200人以上の住民が訪れ、見入っていた。蛍は、園から徒歩10分ほどにある小野学園女子中学校の生徒が、校内の自生研究室で育てた「秘蔵っ子」だ。卵から幼虫に孵(かえ)し、約400匹を同園に放流した。

 同校は2008年に、理系に力を入れていくという方針に舵を切った。理科教育が充実している学校として、評価されている。

 そのシンボルとなったのが、蛍だ。蛍が自生できる環境は人間にも優しいという理念のもと、09年に「ホタルプロジェクト」をスタートさせた。校内に自生研究室を設置するかたわら、中学生は蛍が自生する福島県や群馬県などで現地調査を実施。大井町自然再生観察園に、現地の里山に似た環境を再現したビオトープをつくった。4年を経て、ついに園で幼虫から育った蛍が光った。

 中学生の希望者には、月曜日の放課後に工夫を凝らした理科実験を行うサイエンスラボラトリーを実施している。あった「犯人を捜せ」では、教師が血液、髪の毛などを提供。生徒は薬品を使ってDNAを解析し、データから該当教師を探り出す。他にも、体長2メートルの巨大なサメの解剖など、普段の授業ではできない実験を行っている。

「まずは理科に興味を持ってもらうのが狙い。教師の負担も大きいが、理系学部に進学する生徒が増えるなど、成果も上がっている」(栗田教頭)

 これらの取り組みによって、以前は1割程度だった理系進学希望者が現在は3~4割に。薬学、看護からバイオ、理工と志望する範囲も広がっている。

AERA 2014年4月28日号より抜粋