「東電のプロパーの人間から、自分はスパイ扱いされている。朝、会社に行って部屋に入ると、ずっと監視されている」
意味するところは、こんな構図だ。経産省から原子力損害賠償支援機構(原賠機構)に出向し、2012年6月に東電の経営中枢に送り込まれた嶋田氏のミッションは「東電解体」。少なくとも発電と送配電部門を切り離す「発送電分離」に手をつけることだが、当然、それは東電の人間からすれば絶対に避けたい事態だ。
これまでは、社内の隠然たる反発も、取るに足らないことであっただろう。ところが、その動きが無視できないものになってきた。東電の守旧派が息を吹き返しつつあるのだ。その原因は、自民党政権の復活である。
「もともと電力業界と自民党はつながりが深い。安倍政権ができた12年末の総選挙が決定的でした。マンパワー、資金投入ともに水面下でかつてのように動いた。『今回は東電ががんばった』と、財務省でも評判になっていた」(政治記者)
実際、その恩を返せとばかりに、さっそく自民党議員への働きかけは始まっている。大手電力10社でつくる電気事業連合会(電事連)は今年1月、自民党本部が国のエネルギー基本計画について所属議員にアンケートした際、“模範回答”を配った。原発の必要性や新増設、再稼働を訴える内容だ。
「東電も取締役ら幹部が議員に対して説明に上がっていました。もちろん、河野太郎衆院議員ら党内の『脱原発派』は触りません。むしろ無色透明な議員が対象で、シンパを増やそうとしていたのです」(自民党関係者)
※AERA 2014年3月17日号より抜粋
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