シリコンバレーでは今、第2次起業ブームにわいている。ベンチャーで課題になっているのが、いかに人材を確保するかということだ。

 流れに乗ったシリコンバレーのベンチャーにとって、人材確保は、事業を拡大するための大きな課題だ。数人足らずのベンチャーに対し、「巨大化」したグーグルやフェイスブックはエンジニアに対し、100万ドル、日本円で約1億円の年収を約束することもいとわない。

「福利厚生や社員特典は、ベンチャーにとってかなり重要ね。無料の社食、通勤バス、マッサージ、クリーニングなどは一般化している。ベンチャーの勤務時間は長時間だし、休日も自宅で働く仲間も多いから当然といえる」(リー)

 長時間座ったままのエンジニアに対し、10万円以上する健康椅子すら提供するという。しかし、創業間もなく、黒字化もしていない企業にとって、そうした“特典”は大きな負担だ。

「人材確保はチャレンジだ。ベンチャーの特徴は、社員がビジネスに対する信念や情熱を共有できるかどうかが重要。成功するかどうかはチームのよしあしにかかっている」

 と話すのは、エアービーアンドビーのエンジニアリング担当バイス・プレジデント、マイク・カーティス。同社は、一般市民が自宅の一部を宿泊施設として格安で提供し、各地の文化を知ってもらう宿泊仲介のベンチャーで、現在日本を含め192カ国に広がっている。

 大企業とベンチャー間の「特典格差」を解消しようと始まったベンチャーさえある。日本人の福山太郎(27)が始めたエニーパーク(パークは特典の意味)だ。

「シリコンバレーはいかに短期間にいい人材を集めるかが勝負」といい、「特典の少なさが障害にならないようにする」ために、歯医者やスポーツジム、携帯電話の割引サービスを、企業に代わって提供するベンチャーを誕生させた。

AERA  2014年3月3日号より抜粋