楽天 執行役員黒坂三重さん(47)2012年からCSR部門を担当する。震災直後は、東日本大震災の被災地で必要な物資を「楽天市場」で出店店舗に非営利な価格で提供してもらう「楽天たすけ愛」を実施(現在は終了)。また車両型の移動図書館「楽天いどうとしょかん」を福島県で展開するなどした。「CSRをはじめて、関わる人と仕事がさらに増えました」(撮影/写真部・関口達朗)
楽天 執行役員
黒坂三重さん(47)

2012年からCSR部門を担当する。震災直後は、東日本大震災の被災地で必要な物資を「楽天市場」で出店店舗に非営利な価格で提供してもらう「楽天たすけ愛」を実施(現在は終了)。また車両型の移動図書館「楽天いどうとしょかん」を福島県で展開するなどした。「CSRをはじめて、関わる人と仕事がさらに増えました」(撮影/写真部・関口達朗)
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黒坂さんの経歴地方企業:1987年、ラジオ福島入社。のちにジャガージャパンなどに転職→ベンチャー:1999年、ワイノット入社→大企業:2002年、楽天入社(写真:楽天提供)
黒坂さんの経歴
地方企業:1987年、ラジオ福島入社。のちにジャガージャパンなどに転職→ベンチャー:1999年、ワイノット入社→大企業:2002年、楽天入社(写真:楽天提供)

 昨今、「ファーストキャリア」なる言葉が、主に学生の間で使われている。初めて就いた仕事や会社を指す言葉で、「僕のファーストキャリアは三菱商事」「私のファーストキャリアは人事から始まった」などと使われる。鳥には、最初に見た相手を親と思う「刷り込み」の習性があるが、人間のキャリアも同じ。自らの働き方をベンチャーで刷り込まれるか、大企業で学ぶかによって、その後のキャリアは大きく変わる。

 実はファーストキャリアには、いくつかの「都市伝説」がある。そのひとつが、「ファーストキャリアに小さな会社を選ぶと、大きな組織には転職しづらい」というもの。しかし今回の取材では、それを覆す多くの実例に出合った。楽天で執行役員を務める黒坂三重さんのファーストキャリアは、社員わずか30人の地方企業「ラジオ福島」だった。

 お客さんが来たらお茶を淹(い)れ、週に3回は布巾を漂白する。仕事そのものは単調だったが、小さな組織ゆえ「前後左右の仕事」にも携わることができた。漂白剤は自分で買いに行き、適した大きさを考えるようになったら、仕事の流れが見えてきた。

 その後も小さな会社を転々としたことで、見える仕事の幅がどんどん膨らんだ。会社は、機能の寄せ集めだ。自ら多くの機能を経験した分、部下が増えても、それぞれの仕事内容が把握できた。

 10年前、楽天のEC部門で400人の部下を抱えたときも、顔と名前と役割は一致していたという。

「知ろうとすれば、情報は入ってくる。小さな組織出身だとしても、マネジメントの幅は広げられます」

AERA  2014年3月3日号より抜粋