グループ総売り上げ9兆円を叩きだす、セブン&アイ・ホールディングスのカリスマ経営者・鈴木敏文会長。これまでプライベートブランドであるセブンプレミアムや、米国セブンの経営再建など、常に周囲の反対を押し切って成功してきた。

 そんな彼が、最も「無茶だ」「失敗する」と周囲から強く反対されたのは、2001年のセブン銀行設立のときのようだ。鈴木もこう記憶している。

「周囲は皆、素人が銀行をやってもうまくいくはずないという見方でした。メインバンクの頭取さんが私のところへ来られて、『やめたほうがいい。あなたが失敗するところを見たくない』とおっしゃったくらいです」

 それでもやろうと決断した理由は何か。鈴木はこう話す。

「銀行は、土日は休みだし、午後3時に閉まってしまう。私は、家計は妻任せですが、素人目に見ると、近所のコンビニで夜中でも日曜でもお金が下ろせたら、お客様にとって便利だろう、と当たり前のことを思っただけです」

 しかし「あったら便利」はコンビニでは重要だろうが、銀行にとっては無関係に思える。それに、銀行業をやるには免許が必要だ。誰が考えたって、無理な話だった。

 勝算はあった。

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