昨秋見つかり、「満月級の明るさになる」と期待されたアイソン彗星(すいせい)が、11月29日の太陽最接近を前に観測の好機を迎えている。見やすくなるのは11月後半から。直径100メートル以下とみられ、太陽の熱や光で溶けてしまう懸念もあるが、しぶとく生き残れば、12月の初めには見上げるほどの尾をなびかせるかもしれない。

 米ハーバード大学がまとめている世界の観測報告によると、アイソン彗星の明るさは11月初めで8等ほど。大きめの望遠鏡なら目でも見え始めた。これからさらに明るさを増し、今月後半には双眼鏡で見えるようになる。宵の明星として知られる金星(マイナス6等)くらいになるかもしれない。

 アイソン彗星は昨年9月、国際科学光学ネットワーク(ISON)の望遠鏡が、木星よりも遠くにいるところを見つけた。注目されたのは、その動き方からだ。太陽にギリギリまで近づくことがわかり、極めて明るくなると期待が高まった。その後遠ざかり、二度と戻ってこない。

 アイソン彗星は明け方、東の空低くにいる。日増しに明るくはなるものの、昇ってくる時刻がどんどん遅くなるため、夜が明けるまでのわずかな時間が勝負だ。11月初旬は火星、中旬はおとめ座の1等星スピカ、下旬は地平線ギリギリにいる土星や水星の近くにいる。29日前後は太陽に近すぎて観察しにくいものの、12月3日ごろ以降、再び夜明け前の東の空に現れる。

 ただ、アイソン彗星が思ったより小さいという不安要素も出始めた。日本大学の阿部新助准教授は「太陽に近づく前に消滅するかもしれない」と懸念する。それほど明るくならない可能性もあり、双眼鏡を使った方が見つけやすそうだ。東の空が広く開けた暗い場所で、彗星の位置が分かる星座早見盤があると探しやすい。

AERA 2013年11月18日号より抜粋