ロンドンの大英博物館で展覧会「春画:日本美術のセックスと快楽」が来年1月5日まで開かれ、約170点の春画が展示されている。

 春画は、江戸時代を中心に約300年にわたって生み出された浮世絵作品。特異なのは、あからさまな性描写だ。日本では古代から江戸時代まで、性は一般的におおらかに肯定された。しかし明治維新以降、あらゆる分野で欧米の国々に追いつくことを国是にした政府は、性に関しても宗教・倫理的にタブーとみなす欧米を手本とするようになった。たちまち春画の存在は否定され、一般の人々の目から隠され、記憶から消えていった。

 一方、そのころヨーロッパなどでは性のタブー視化を見直す傾向が進み、画家のロートレックやピカソなどが春画のエロチックで繊細な表現を高く評価、精力的に収集した。

 今回は、大小2匹のタコから性的快楽を受ける「蛸と海女」(葛飾北斎)や、遊女として成功するための作法を学ぶ「玉屋遊女図」(歌川豊春)などが含まれる。16歳以下は保護者の同伴を必要とする年齢制限が設けられたこともあり、開催前は「1759年の開館以来、もっとも性的に露骨な展示」「日本の遊女に会えます。ただし17歳以上」などと揶揄する声もあった。しかし10月3日に展示を開始すると、場面説明を読んだ男女の観覧者から明るい笑い声が上がり、高級紙ガーディアンは「一般庶民の率直で多彩な性風俗の、世界的にも珍しいユーモアあふれた表現」と異例の四つ星評価を与えた。

 博物館の展示責任者は、アジア部門日本セクション長のティモシー・クラークさんだ。

「春画に絞ったこの手の展覧会はイギリスでは初めて。最高の春画展と自負している。描写はむき出しかもしれないが、セックスを自然な営みと捉えた正直さが好ましい」

AERA 2013年11月4日号より抜粋