32歳で復興政務官に就いた小泉進次郎氏。安倍政権は「人寄せパンダ」を期待するが、父の動き次第で爆弾にもなる。
9月30日に首相官邸で辞令交付を受けた進次郎氏。10月4日には、さっそく被災地の宮城県に入って言った。
「(同県出身の石ノ森章太郎原作の)仮面ライダーのように課題解決に全力で取り組みたい」
テレビ、新聞のカメラに追いかけられ、かつて自ら評した「客寄せパンダ」ぶりは健在だ。
ただ、ここへ来て政権を慌てさせることが、進次郎氏の周辺で起きた。父の純一郎氏が「脱原発」を全開で主張しているのだ。
名古屋市内での講演では、「経済界では大方が原発ゼロは無責任だと言うが、核のゴミの処分場のあてもないのに原発を進める方がよほど無責任だ。原発をゼロにするという方針を政府・自民党が出せば一気に雰囲気は盛り上がる」と発言。これには仇敵(きゅうてき)だった小沢一郎・生活の党代表や菅直人元首相までもが「大歓迎」などとエールを送り、「小泉(純一郎)・小沢と組んで脱原発再編だ」(野党幹部)と、脱原発派を勢いづかせている。安倍首相が米国で、「日本は原発の安全技術で世界に貢献していく。放棄することはない」 と、原発堅持を明言した直後だけに、菅官房長官らは火消しに追われた。政治評論家の浅川博忠氏はこう語る。
「進次郎氏の政務官起用は純一郎氏を牽制(けんせい)する『人質』としての意味もあるでしょう。だが数々の政局を勝ち残った純一郎氏のこと。郵政同様、国民世論に訴え、自民党を動かす可能性もある。思惑は計り知れません」
現在、進次郎氏は原発再稼働を掲げる安倍首相に表だって異議を唱えてはいないが、これまで「将来の脱原発」「自民党政権の原発政策の反省」という言葉を発してきた。進次郎氏が安倍政権の「被災地向けの広告塔」として、最後まで忠勤を励むとは限らない。
※AERA 2013年10月14日号