今や芸人だけではなく、多くの人が日常的に行っている「ツッコミ」。場をなごませたり、人から言葉を引き出したりと、うまくやればその効果は大きい。プロである芸人や著名人に、ツッコミテクを聞いた。
ツッコミの技術のひとつとして有効なのが、自分の失敗談を披露するなど「自虐的」になること。
「下衆の極み!」とささいなことを断罪しまくるキャラクターのハマカーン・浜谷健司さん(35)は、「ダメ人間の要素がある、『お前に言われたくねえよ』とツッコミ返せるようなキャラクターがいいと思います」と自虐ネタの効用を語る。上から目線のツッコミをしがちな人は、自虐ネタを付け加えてみたい。
外資系コンサルタント企業マッキンゼーに勤め、今はNPO法人「テーブル・フォー・ツー・インターナショナル」(TFT)代表の小暮真久さん(41)が「得意技」と語るツッコミ術は、「あえてアホなことを聞く」ことだ。
「会話の流れから『ガター』がなくなり、いろんなアイデアが出てきやすくなるんです」
ある小売店チェーンと商品開発の相談をしていた時、男性客にも女性客にもなんとか受けるものをと頭をひねる先方に小暮さんはしれっとツッコんだ。
「もしかしてアホなことかもしれないんですけど、思い切って男性客は捨てません?」
総花的なプランよりもターゲットを絞ったプランニングを──そんな正面突破の説得よりも、一見突拍子もないような提案が相手の心の「しきい」を崩す。この時のポイントは「素人なんですが」「アホなんですが」とへりくだる前置きをつけることだ。
モデルの浦浜アリサさん(23)は昨年から今年にかけ、小暮さんとFMラジオ番組を担当していた。社会貢献をテーマに毎週ホストとしてNPO代表や大物アーティストを迎える中で浦浜さんが考えたのは、「相手のスタンスを崩す」ツッコミを入れること。キャンドルアーティストのキャンドル・ジュンさんが登場した時、「渋い声ですね」と持ち上げたあと放った一言が、「キャンドルは日常的に持ち歩いてはいないんですか?」
思わずキャンドルさんも「家ではキャンドルはほとんどつけないんですね」と笑い、雰囲気がほぐれた。あまりメディアに登場しないキャンドルさんだが、2回にわけて放送するほど長時間にわたりしゃべってくれた。
「うまくバカを演じつつ、本当にバカと思われないようにするツッコミに気を使いました」
※AERA 2013年9月30日号