トラヴリン・ライト/クイーン・ラティファ
トラヴリン・ライト/クイーン・ラティファ
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ジャズ・ファンにこそ聴いて欲しい女性ラッパーの女王のヴォーカル
Trav’lin’ Light / Queen Latifah

 ソウル~R&B系のシンガーがスタンダード・ナンバーを歌うジャズ・アルバムを作る例は、昔からあった。近年は中島美嘉やココドール(元SPEEDのhiro)といったJ-POPの人気シンガーがジャズに挑んで、本家を脅かすほどの成果を上げている。

 89年にアルバム・デビューしたクイーン・ラティファは、ポジティヴで強烈なメッセージによって“女性ラッパーの女王”の地位を確立した斯界のトップ・パフォーマーだ。近年は女優の仕事でも評価を高めている。

 そんなラティファは前作で転機を迎えた。自身の本名をタイトルに冠した『ザ・ダナ・オウエンス・アルバム』はハービー・ハンコックを始め、ジャズ/フュージョンの著名ミュージシャンを起用し、ジャズとポップスの名曲を取り上げて、大胆なイメージ・チェンジを図った。そして3年を経たこの新作は、前作の路線をさらに押し進めた仕上がりである。

 ジョニ・ミッチェル初期のヒット曲《ポエトリー・マン》をオープニングに持ってきたのは、ジョニが昨今のカヴァー・トレンドとはいえ、ラティファの音楽ルーツを知る上で興味をひかれる。ビッグ・バンドをバックに歌う《アイ・ラヴ・ビーイング~》《アイム・ゴナ・リヴ~》ではシンガー冥利の喜びを露にし、ウィズ・ストリングスの《トラヴリン・ライト》ではアダルティな魅力と色香をふりまく。それもこれもしっかりとした土台の歌唱力があるからこそのプロジェクト・アルバム。ブラック・コンテンポラリー系に興味がないジャズ・ファンにこそ、ぜひ聴いてほしいヴォーカル作だ。

【収録曲一覧】
1.Poetry Man
2.Georgia Rose
3.Quiet Nights Of Quiet Stars
4.Don’t Cry Baby
5.I Love Being Here With You
6.I’m Gonna Live Till I Die
7.TRav’lin’ Light
8.I Want A Little Sugar In My Bowl
9.I’m Not In Love
10.What Love Has Joined Together
11.How Long (Betcha Got A Chick On The Side)
12.Gone Away
13.I Know Where I’ve Been

●2007年作品

クイーン・ラティファ:Queen Latifah(vo) (allmusic.comへリンクします)
ジョー・サンプル:Joe Sample(p)
ジョージ・デューク:George Duke(p,key)
クリスチャン・マクブライド:Christian McBride(b)
ジェフ・ハミルトン:Jeff Hamilton(ds)
トゥーツ・シールマンス:Toots Thielemans(hmca)
スティーヴィー・ワンダー:Stevie Wonder(hmca)

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