マイケル・ブレッカーの熱演が光る、スイスのギタリストの注目作
CatScan II/Harald Haerter
ハラード・ハーターは、1958生まれのスイスのギタリスト。シリアスなコンテンポラリー・ジャズを得意とするタイプで、音色も弾き方も非常にエッジが立った、ひっかかりのあるテンションの高い奏法が印象的だ。おそらく初期のジョン・スコフィールドから大きな影響を受けたのだろうが(世代的にそれは納得できる)、一方では機械的なループ(反復)を駆使した幻想的なサウンドも繰り出すあたりがおもしろい。こちらの方はあきらかにビル・フリゼール直系のスタイルであり、そういう点でハーターは、典型的な「80年代ギタリストの弟」世代なのだと言える。
ハーターは以前にもマイケル・ブレッカーやデューイ・レッドマンを迎えたアルバム『キャットスキャン』をリリースしているが、これはその続編に当たる作品。今回もブレッカー、ジョー・ロヴァーノ、クリス・ポッター、ニルス・ペッター・モルヴェルなどの豪華メンバーがずらりと並んでいて、ハーターの熱演もさることながら、ゲストたちの演奏が気になってしまう。
中でもすばらしいのは、2曲目に入っているブレッカーのソロだ。スローな曲での内省的で思索的なソロは、ブレッカーが新たな境地を開拓しつつあったことを雄弁に伝えるし、ハーターのすさまじくアグレッシヴな演奏に触発されて、ほとんどフリー・ジャズ的に暴れるトラックを聴くと、ブレッカーの早すぎた死が、改めて惜しまれる。ロヴァーノが吹くデューイ・レッドマンの曲「ムシ・ムシ」も、ブレッカーとは一味違った悠揚迫らぬ吹きっぷりで、ロヴァーノ・ファンも要チェックのアルバムだ。
【収録曲一覧】
1. CatScan
2. Mr.Mounster
3. Cosmic
4. Lulas
5. GBT
6. Mute
7. Mushi Mushi
ハラード・ハーター(g) Harald Haerter (allmusic.comへリンクします)
フロリアン・ストッフナー(g)
マイケル・ブレッカー(ts)
ジョー・ロヴァーノ(ts)
クリス・ポッター(ts)
ニルス・ペッター・モルヴェル(tp)
エリック・トルファ(tp)
フロリアン・ゲーテ (b)
ベンツ・オースター(b)
マーセル・パパウ(ds)
他