企業の海外依存度が高まる中、駐在員にかかるプレッシャーは拡大している(撮影/写真部・関口達朗)
企業の海外依存度が高まる中、駐在員にかかるプレッシャーは拡大している(撮影/写真部・関口達朗)
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結果を出して当たり前。そんな本社の期待を裏切れば、失意を抱え帰国することになる(撮影/写真部・関口達朗)
結果を出して当たり前。そんな本社の期待を裏切れば、失意を抱え帰国することになる(撮影/写真部・関口達朗)

 企業が成長するために、今後は海外進出、とりわけ成長市場である中国への進出は必要不可欠といっていい。グローバルな社員を育てるのは簡単なことではないが、企業は語学やビジネススキルは生煮えでも、現地に行けば何とかなるだろう、と駐在員を送り込む。

 機械メーカーの40代の男性は突然の中国赴任の辞令にとまどった。TOEICは600点台で海外赴任も初めて。技術畑ひと筋なのに中国では営業責任者も務め、売り上げを3倍に増やせと命じられた。待っていたのは塗炭の苦しみの日々だ。

 肩書は副社長にあたる副総経理。だが客と契約を結ぶ権限も、予算の使い道の裁量も与えられない。日本本社の稟議を待たなければ商談が進まない一方で、「顧客動向をまとめろ」「市場分析のデータを出せ」と次々に催促される。まるで地方の営業所長になった気分だった。

 現地の中国人社員の扱いにも手を焼いた。担当者が置かれていなかった受発注業務を求めると、「契約外の仕事です」と断られる。社員同士で給与明細を見せ合い、賃上げを要求される。突然辞職し、好条件の欧米企業に移る社員も相次いだ。そんな事情を知らない本社は「成長市場なんだからもっと利益を出せ」と言うばかり。任期は3年だったが、ノイローゼになり、願い出て2年で帰国した。

中国に5年間勤務した大手商社のある社員は、販路開拓が進まなかったとして帰国後、部下のいない担当部長に降格された。未開拓の市場を切り開くには、海外ビジネスに慣れた商社マンでも「種まき」に時間を要する。「もう新興国なんてうんざり」と、この社員は嘆く。

 かくして、現地の盛り場では各社の駐在員が集まり、こんな会話が展開されるという。

「ほんと、OKYですよね」

 Oは「お前が」、Kは「来て」、Yは「やってみろ」の略。これもまた、グローバル人材の現実なのだ。

AERA  2013年7月8日号