100歳以上の高齢者が、今年ついに5万人を突破した。中には100歳で現役サラリーマン生活を送っている人もいる。元気で長生きの現役サラリーマンはどんなライフスタイルを送っているのか。
朝8時30分。スーツにネクタイ姿の一人の老紳士が大勢の通勤客に交じり、JR辻堂駅(神奈川県藤沢市)の自動改札を通り抜けた。
福井福太郎さん。かくしゃくとした足取りだが、5月で100歳になった。毎朝1時間近くかけ、東京・神田にある宝くじ委託販売会社の「東京宝商会」まで、快速電車と山手線を乗り継いで通勤する。
「毎日会社に出勤すると、気持ちにハリが出ます。長生きの理由のひとつだと思います」
43歳で衣料店を開き、48歳の時に友人の誘いで証券会社に転職。そして82年、70歳の時に「東京宝商会」に転職した。現在の肩書は「顧問」。毎日午前9時半から午後1時半まで、相談役として会社を見守っているという。
卒寿(数え年で90歳)を過ぎたころから足が弱くなり耳も遠くなったというが、それ以外は特に悪いところは見当たらない。
夜は9時に布団に入り、朝は4時半に起きる。1日7千~8千歩、多い日は1万歩近く歩く。月に2回は謡(うたい)の稽古に出かけ、年に一度は発表会で舞台にも立つ。60年近く続けるが、腹から声を出すことで健康にも役立っているのではないかと話す。趣味は読書とテレビ。大相撲と巨人戦観戦が楽しみだ。
驚くのは食欲だ。三食しっかり食べる。3年前に妻を亡くしてからは、同じ敷地内に長男夫婦が住んでいるものの、一人暮らし。朝食は自分で準備する。夕食は長男夫婦と一緒に同じものを食べるが、家族がびっくりするほど食欲旺盛で、トンカツもペロリと食べるという。甘いものも好物だ。
「生きているということは、天から与えられた命ですから、しっかり生きなきゃあと思っています」
※AERA 2012年11月19日号