ウーマンズ・パフューム/アントニオ・ファラオ
ウーマンズ・パフューム/アントニオ・ファラオ
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歌の国の奥深い音楽文化に触れられる秀作
Woman’s Perfume / Antonio Farao

 2007年、日本のジャズ・シーンにおけるトピックスの1つは、現在のイタリアン・ジャズが大きな注目を集めたことだった。国内盤として多くのアルバムがリリースされたし、エンリコ・ラヴァをはじめとする来日公演も盛況であった。

 今回ご紹介するアントニオ・ファラオは、1998年のデビュー作以降、ほぼ毎年リーダー作を録音し、2003年には初来日も果たしている60年代生まれの代表格と言っていいピアニストだ。

 この最新作は同国の映画音楽の作曲家として知られるアルマンド・トロヴァヨーリに捧げたソングブックである。前作『パゾリーニに捧ぐ』が母国の名監督へのオマージュだったことを踏まえると、近年のファラオが映画関連から創作の刺激を得ていることが明らかだ。

 トロヴァヨーリは元々30年代にジャズ・ピアニストとして出発した男。父親の影響で子供時代からその音楽を聴いて育ったというファラオにとって、この企画作には必然性があったわけだ。

 ぼくを含めて原曲に関する知識がないリスナーでも、本作はすこぶる魅力的なピアノ・トリオ・アルバムに仕上がっている。ミディアム・テンポで軽快にスイングするオープニング・ナンバーの《古き友ら》から、ゴキゲンなサウンドが嬉しい。かねてから自分のメロディ・センスと似ていると感じていたトロヴァヨーリの楽曲に、新たなアレンジを施して美旋律を生み出すファラオのセンスに魅了される。

 また本作にはファラオのオリジナルも4曲収録されており、トロヴァヨーリ曲と違和感なくプログラムを構成しているのも収穫。フレットレスベースと思われるディ・ピアッツァの起用は現代感覚を表出するスパイスの役目を果たし、ファラオ・トリオの新境地になった。歌の国=イタリアの奥深い音楽文化にも触れられる秀作である。

【収録曲一覧】
1. Toto Sexy
2. La Via Dei Babbuini
3. Profumo Di Donna
4. Positive Life
5. Toto Sexy
6. Try To Change
7. Il Prete Sposato
8. My Father’s Song II
9. Faustina
10. Il Vedovo
11. Nowise
12. Paolo Il Caldo

アントニオ・ファラオ:Antonio Farao(p) (allmusic.comへリンクします)
ドミニク・ピアッツァ:Dominique Di Piazza(b)
アンドレ・チェカレッリ:Andre Ceccarelli(ds)

2006年9月パリ録音