リ・ヴィジョン/ニルス・ペッター・モルヴェル
リ・ヴィジョン/ニルス・ペッター・モルヴェル

ノルウェーから発信される“フューチャー・ジャズ”
Re-Vision / Nils Petter Molvaer

 1990年代末にノルウェーを発信地として生まれた、新感覚のミュージシャンたちによる“フューチャー・ジャズ”。このジャンルを象徴する主要アーティストがニルス・ペッター・モルヴェルであり、聴けばすぐにそれとわかる独自のスタイルを築き上げた点で、世界的に見ても実にユニークな音楽性を持つトランペッターなのだ。

 デビュー作『クメール』から10年を経てリリースされた本作は、モルヴェルが3つの映画のために書いた楽曲を素材として、再構築したもの。それらの原曲はアルバムの形で広く世に出るのは初めてなので、新録作品と受け取っていい新鮮さがある。

 本作がモルヴェルの「ベスト・オブ・サウンドトラック」にとどまらず、固有のアルバム・コンセプトに基づいて制作されたことは、選曲と構成に留意しながら耳を傾ければ納得できるはずだ。

 ヴォイスが物語の幕開けを告げる#1から、打楽器風電気音とループ状ビートの融合がインド音楽との関連性を示唆する#2へと進み、さらに静謐なアンビエント調の#3へと展開。これら3曲を切れ目なしに編集したことだけを取っても、モルヴェルの優れたリメイク・センスを感じずにはいられない。

 同様の連続技は無伴奏トランペット・ソロの#7から始まるアルバム後半にも施されており、全体にドラマ性のある流れをもたらしている。#12には再びヴォイスをフィーチャー。つまり最初と最期のナンバーに人声を盛り込んだわけで、ここにもモルヴェルの意図が垣間見える。

 これまで『リカラード』『リメイクス』と、2枚のリミックス・アルバムを制作してきたが、『リ・ヴィジョン』はアルバム名こそ過去から続くシリーズ作を連想させるものの、元々映画音楽だった楽曲を新たな視点で捉え直すことによって表現された「モルヴェルのもう1つの顔」と言うべきだろう。なお日本盤にはボーナス・トラックが1曲追加収録されている。

【収録曲一覧】
1. Torn
2. The Beginning
3. Alone In The Bathtub
4. Visitation
5. Arctic Dub
6. Perimeters
7. Trumpet Player In The Backyard
8. The End
9. The Visitor
10. Azad’s Theme
11. Decisions
12. Leaps And Bounds

ニルス・ペッター・モルヴェル:Nils Petter Molvaer(tp,etc) (allmusic.comへリンクします)
アイヴィン・オールセット:Eivind Aarset(g)
アンダース・エンゲン:Anders Engen(ds)