談慶さんにインタビューしたのは、演芸場へ向かう直前。自宅そばの喫茶店だったが、普段とは違い口調は固い。取材自体、直前になり断られかけた。

「今でも悩んでますよ。『こんな時に落語か? ふざけるな!!』と炎上騒動になるんじゃないかってね。正直言って、キャンセルのご連絡もいただいていますし……」

 だが、26日にSNSで開催決行を告知するや、「よくぞ決めてくれました」との応援メールも複数寄せられたという。

「『新規に行くことにしましたから、チケットをお願いします』ってメールもありましたし、僕と同じ長野県出身の女優・秋本奈緒美さんからは『英断です。必ず行きます』と連絡がきました。嬉しかったですね」

 そもそも落語のルーツは、「室町時代末期から安土桃山時代にかけて戦国大名のそばに仕え、話の相手をしたり、世情を伝えたりする『御伽衆(おとぎしゅう)』と呼ばれる人たち」(落語芸術協会HPより)だ。その後江戸時代元禄期(1688~1704年)に、街中で庶民相手にオチのある滑稽話を披露する話し上手が現れ、それが落語家の始まりとされる。

「以降、大飢饉や天変地異、それに天然痘、コレラと言った流行り病が何度も日本を襲い、大勢の人たちが亡くなられました。戦争もありました。そんな時でも庶民は辛いこと苦しみを笑いに変える落語を楽しんで今に至っています。いわば、落語は日本に住む人々が生きるための叡智が詰まってるんじゃないかと。だからこそ、自粛ムードが蔓延してる今、落語が必要だと思うんです」

 そして4時間後、談慶さんの姿は国立演芸場にあった。客席は7割ほどの入りだった。

「思ったより、当日キャンセルが少ないようです」と、談慶さんはホッとした表情だった。

 この日の“開口一番”は、談慶さんの兄弟子・立川談四楼門下の立川半四楼さんが、骨董屋を舞台にした「金明竹」を。そして談慶さん登場。マクラから大いにウケた。

 先日の長野県内での高座。話している最中に携帯電話で会話を始める客がいたかと思ったら、館内の石油ファンヒーターから灯油切れを知らせるメロディがけたたましく鳴り出した。ファンヒーターをよく見たら、メーカーが「コロナ」……。

 ゲストの演目の後、中入り後は、再び談慶さんだ。演目は人情噺の名作「鼠穴」。ストーリーはこうだ。

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談慶さんの中入り後