~放蕩の末、大店の主人である兄を頼った弟が、兄から貰ったわずかばかりの元手で商売に成功する。そのお礼のため金を持って兄の店を訪れ泊まることになったものの、深夜に店が火事に遭い全財産は灰燼に帰してしまう。

「艱難辛苦を乗り越える兄弟の話なので、ちょうど日本の現状に合うような気がしましてね。今回は、長野から出てきた兄弟という設定で、信州弁を交えてやろうと思っています」(談慶さん)

 人情噺を得意とする談慶さんだけに、ドッと笑いもあれば、しんみりと聴かせる場面もあり、最後は万雷の拍手で幕を閉じた。

 と思ったら、再び緞帳が上がった。

「今日は生涯の中でも忘れられない夜になりました。落語が生まれて400年余り。皆さんに聞いていただいた落語を我々がちゃんと受け継いでいこう、と先ほどゲスト出演していただいた月亭方正さんと話したところでございます。必ずこの日が後に笑いになって帰ってくるように、ご祈念申し上げます。本日は本当に、本当に有難う御座いました」

 “本当に”を二回繰り返すあたり、談慶さんの思いの強さが伝わってきた。出口では談慶さんが観客を見送り、しばし歓談。その中には秋本奈緒美さん、歌手の沢田知可子さん、TBSアナウンサーの秋沢淳子さんの姿もあった。

 この日販売された談慶師匠の新著「教養としての落語」(サンマーク出版)。自宅で書いてきた著者名のサインとともに記されていたのは“笑門来福”の四文字だった。(高鍬真之)

※週刊朝日オンライン限定

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