いやーなムードが日本中を覆っている。自粛自粛自粛、そしてキャンセルの嵐…。新型コロナウィルスが猛威を振るう中、安倍晋三首相は2月26日、「2週間のイベント自粛」を呼びかけ、27日には「全国の小中高校の休校要請」を発表した。
それらのニュースが流れた直後から全国各地のイベントやコンサート、舞台は、中止、キャンセルが続出。主催者や出演者、関係者から「死活問題だ」と悲痛な声が上がっている。
だが、そんなムード漂う2月28日、国会議事堂にほど近い国立演芸場で独演会を開いた落語家がいる。故・立川談志の18番目の弟子で、元ワコール社員という経歴の立川談慶さんだ。
「まずご理解していただきたいのは、無防備に開催したのでは無いってことです。入り口にはアルコール消毒液を置き、ご来場の皆さんには全員に手を消毒していただきました。高座の後、恒例である握手や私の著書へのサイン会、ツーショット写真の撮影、さらに大人数での打ち上げも自粛しました」
談慶さんが国立演芸場で独演会を開催するのは昨日で13回目。同演芸場は客席数300席ながら、落語ファンにおなじみの高座である。
もちろん迷いは多々あった。国立演芸場から開催の有無を確認する電話があったのは、26日だ。
「『自主公演については28日から3月15日まで中止としますが、貸し公演については主催者にその判断を委ねます』というんです。実際、演芸場主催の落語会は当面、3月15日まで中止になっていますしね」
安倍首相の自粛要請の前、2月21日に東京都は、『都が主催する500人以上の大規模な屋内イベントは、原則延期か中止。食事を提供する催しは屋外でも延期か中止にする』と指針を発表しており、談慶さんはこれを参考にしたという。
「国立演芸場のキャパは300名ですし、飲食の提供はしない。私の客層は、30代40代前後が多く、新型肺炎で最もリスクが高いとされる高齢者が比較的少ない。それらを熟慮した上で開催を決めたのです。それとね、もし師匠・談志だったらどうするか?って考えました。多分、師匠ならやったと思います」