



新型コロナウイルスの騒ぎが拡大している。2月25日には株価が急落し経済の先行きに不透明感が強まった。外国人観光客の急減で倒産する企業も出ている。イベントの中止も相次ぎマスクの不足も深刻。「コロナショック」の襲来に、政府の対応は遅れ気味だ。
2月25日の東京株式市場では、コロナショックによる企業業績への影響の懸念が強まり、株式が売られた。株価の指標となる日経平均株価の終値は前週末より781円33銭安い2万2605円41銭となった。約4カ月ぶりの安値で、取引時間中には一時、値下がり幅が1千円を超えた。
米ニューヨーク株式市場でも24日、大企業の株価指標であるダウ工業株平均が、前週末より1031・61ドル値下がりした。下げ幅は史上3番目となった。複数のアナリストは、「コロナショックはすぐには収束せず株価低迷が長引く恐れがある」と指摘している。
観光地では中国人らの姿が消え、宿泊施設でもキャンセルが続出。経営に行き詰まるところが出てくるのではないかと心配されていたが、それが現実となった。
民間調査会社の東京商工リサーチによると、愛知県蒲郡市の観光旅館が事業を停止し、破産申請することになった。中国からの団体ツアーのキャンセルが相次いだことが理由の一つで、新型コロナウイルスによる初の経営破綻だという。
「新型コロナウイルスによる影響は急速に広がっています。中小企業は資金調達が難しく、いずれ経営破綻するところが出てくると心配されていました。国内の個人消費は伸び悩み、各企業とも外国人観光客を取り込んで、なんとか生き残ろうとしていた。消費増税もあって倒産が全体的に増加傾向にあるなか、コロナウイルスが追い打ちをかけたのです。経営破綻するところは今後も出てきそうです」(東京商工リサーチ情報本部情報部の後藤賢治課長)
加藤勝信厚生労働相は、対策の基本方針を発表する2月25日の会見で、こう述べた。
「現在国内の複数の地域で感染経路が明らかでない患者が散発的に発生し、小規模な患者の集団が把握されている。まさに今が今後の国内での健康被害を抑える上での極めて重要な時期です」
その上で、新型コロナウイルスの特徴を踏まえて国民に次のような呼びかけをした。
○感染の不安から、適切な相談を行わないまま医療機関を受診することがないようにする
○感染しやすい環境に行くことを避ける。手洗いやせきエチケットを徹底し、風邪の症状があれば外出を控える。やむを得ず外出する場合は必ずマスクを着用する。
○休暇の取得やテレワークについて、企業や団体の協力も必要となる。
○患者の集団が確認された地域では、関係する施設やイベントなどの自粛を検討してもらう。
このように述べた上で、「引き続き先手先手の対応を進めていきたい」と強調した。だが、基本方針といっても、これまで呼びかけていたものとほぼ同じ内容。具体性に乏しく、外出やイベントの自粛などについて、個人や企業の判断に委ねる姿勢が目立つ。