今年の入試で大学入試センター試験が最後となり、来年からは大学入学共通テストに変わる。入試制度の変わり目には、受験生が浪人を回避して安全志向になると言われているが、今年の国公立大やセンター利用私大の出願にもそれが色濃く反映されていた。
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文部科学省は2月5日15時時点の国公立大の出願状況を発表した。昨年同時期と比べて、国立大は約1万8千人、公立大は約7千人減少した。センター試験の受験者数は約52万7千人で、前年比約1万9千人減は過去最大の減り幅だった。少子化の影響も大きいが、全体の出願数にも安全志向が表れたようだ。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんはこう言う。
「指定校推薦やAO入試などに合格し、一般入試前に決めてしまった人も多いでしょう。来年から実施される共通テストについて、昨年11月に英語の民間試験活用が、12月に国語と数学の記述式導入がそれぞれ見送られましたが、もう遅かったですよね。来年への不安が募っていたと思います」
学部系統別の志願状況には、景気や社会情勢の影響がみられた。
減少が目立ったのは、医・歯学系で前年比89%と、教員養成の同90%。共通するのは資格職を養成する学部ということ。近年の好景気で、就職は売り手市場が続いていることが影響しているようだ。河合塾教育情報部チーフの岩瀬香織さんはこう言う。
「ここ数年、大学生の就職状況が良く、資格を取得しなくても就職を心配しなくていいという背景がある。医師や教員など資格職の人気は以前よりは下がりました」
さらに、教育学部に限れば、昨年は教員同士のいじめが報じられ、部活動や休日出勤など時間外勤務が常態化した労働環境が問題視されていることも志願状況に響いたと思われる。
前年比92%と文系の人気のかげりもみられた。その要因を石原さんは次のように分析する。
「今年で東京オリンピック・パラリンピックが終わる。以降は経済の見通しが暗くなると思われて経済学部は人気が落ちています。経営・商、国際系の人気は、今年は落ち着いたとみられます」
これに対し、前年比99%とほぼ横ばいで堅調なのは理工系だ。人気の筆頭はAIやデータサイエンス、IoTなどの情報系。成長分野に受験生が集まったといえそうだ。