林:へぇ~、そうなんですか。五木先生は今もとてもお元気でいらっしゃいますね。

美輪:ええ。ただ、幸田文さんが惜しいなと思って。あの方は江戸前でね、着るものなんか素敵でした。雨の日なんか爪かけをつけた下駄をはいて、雨コートをお召しになって、羽織の衿裏から胴裏から、まあ色の見事なことってなかったです。言葉も江戸弁なんですよね。「幸田露伴(父親)にシゴかれた」とおっしゃってましたね。

林:そうなんですか。

美輪:だけど、近ごろ皆さんおしゃれが上手になってきましたでしょ。ちょっと年配の人もお帽子をかぶって、マフラーの巻き方も上手だし、色のバランスや材質なんかも、とても凝ったものを着てらっしゃるし、ああ、やっと日本もここまで来たかと思って、特にこの2~3年、びっくりするぐらい変わってますね。

林:それはいいほうに、ですか。

美輪:ええ、おしゃれがね。それからテレビなんか見てると、子どもとか学生さんでも、天才的な記憶力や豊富な知識を持っている子がゾロゾロ出てきてますね。そうかと思うと、サディスティックな傾向の人間に近づいてきてるような子も多いですね。精神異常というんですかね。

林:私はネットをほとんどやらないで、たまに調べものをしたりする程度ですけど、罵詈雑言や悪口だらけで、気持ち悪くなっちゃいます。

美輪:だから私はガラケー以外やらないんです。「ヨイトマケの唄」とか「愛の讃歌」とかで、「紅白歌合戦」に出ましたでしょ。そしたら「キモい」とか「死ね」とか「バカ!」とか言う人がいるんですよ。

林:そんなこと言う人いるんですか。

美輪:ネット上にはいるんですよ。そうかと思うと、そうした人たちで言い合ってるんですね。「人格的に問題があるバカばかりだから気にしないでください」とか、「性格が悪いおまえには、この歌のよさがわからないだろう」とか。

林:そうなんですか……。

美輪:悪口を言う人間を分解してみると、どういう人間かわかるでしょう。コンプレックスのかたまり、語彙が少ない……。語彙が少ないということは、それだけの言葉しか知らなくて、それで全人格をあらわしてるんだから、その程度の人間であることを証明している。まともに取り上げる必要はないでしょう。学校でも職場でも、悪口を言ったり意地悪をする人はコンプレックスのかたまりで、自分を優位に立たせようとしてそういうことをする哀れな人間なんだということ。「悪口を言う人の人格に問題があるんだ」と思っていれば、気にしないですむんです。

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